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No.6 ドメスティック・バイオレンス
-古くて新しい家庭の問題-

立命館大学教授 中村正


家庭内暴力への介入

 一般に、家庭内暴力への介入はその関係性に配慮した特殊な形態となっています。 被害と加害の関係の特性に配慮して、保護命令(DV)、一時保護や親子分離(子ども虐待)、接近禁止命令(ストーキング行為)、権利擁護のための保護(高齢者虐待)などの対応が法律によりなされることとなりました。 DVの場合は保護命令ですが、それは、加害者に対して2ヶ月にわたり住居から退去することを命じる退去命令と、6ヶ月の間、被害者に近寄ることを禁じる保護命令が地方裁判所から加害者に発せられます。 子どももその対象にすることができます。 元夫婦関係にある者、事実婚にある者も対象となります。 被害者に近寄ることが禁じられるのです。 その命令に違反すると1年以下もしくは100万円以下の罰金という刑罰が科せられるという仕組みです。

 これらはすべて一時的な当事者の分離という民事上の措置です。 暴力があったからといって刑事事件にせずにこうした措置となったのです。 加害者のすべてが触法行為で刑事罰の対象となるのではないということです。 これは被害者も厳罰を望んでいないこともあるというDVの特質に関連しています。 法律は罰を課すことには消極的です。 とはいえ、危険な関係を継続させるわけにはいかないので、こうした分離の措置をとることとしたのです。 被害を広く救済し、心理的暴力や言葉の暴力や人格の侮辱などとも関わらせて相談の対象としたのです。 なぜなら、DVや虐待の特徴はその犯罪とならない暴力、親子や夫婦(元夫婦)という関係性のなかの行為という点にこそあるからです。 たとえば、心理的な暴力の加害にどう対応すればいいのか、感情的な虐待に対して何ができるのか、被害者が罰を望んでいない場合はどんな対応がいいのか等が問われなければならないと考えます。

 したがって、従来の刑罰よりは拡張した領域や関係を対象にした加害者たちへの対応が焦眉の課題となってきたのです。 DV加害者は、いままで妻に暴力をふるうことに罪の意識がなかった分、事態がよく理解できません。 自暴自棄になったり、逃れた妻子を追跡したり、社会へと怨恨の感情をふくらませたりするかもしれないのです。 大半のDV加害男性は、夫婦喧嘩だと思っていたのに妻から「あなたの行為はDVだ」と指摘され、呆然自失となり、地方裁判所から保護命令を発令され、家庭裁判所から夫婦関係調整という名の離婚調停に呼び出されたりします。 加害男性の精神衛生も悪化するのです。 この時に、彼らを脱暴力の方へむかわせる行動援助の機会があれば効果的です。

加害者への対応

家庭内暴力の社会問題化
DVによる被害の特徴と心の傷つき
家庭内暴力への介入
加害者への対応
男らしさの暴力をのりこえる
恋人同士の時から暴力のないつきあいを

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