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No.2 長時間の時間外労働と自殺
〜過労自殺について〜

東邦大学佐倉病院精神神経医学研究室 黒木宣夫
イラスト 佐藤ゆみこ


III.過労自殺の労災認定に関して

「過労自殺」は過労死と同様に過労に起因した自殺を意味するが、「過労」とは心身ともに疲弊・消耗して蓄積疲労がすすみ健康障害まで起こした状態をさしている。自殺が労災認定されるかどうかは、労災保険法で「故意に自殺した場合には、業務との因果関係が中断」と規定されているため、故意がない自殺、つまり心神喪失状態で行われた自殺3)でないと労災認定はされにくいというのがこれまでの現状であった。

しかし「心理的負荷による精神障害に係わる業務上外の判断指針4)」(以下、判断指針)では、業務に起因した精神障害のために正常の認識ができず、行為選択能力が著しく阻害され、抑制力が欠如して自殺に至った場合には業務上と認定されることとなった。すなわち、業務が濃厚に関連した精神障害に基づいて行われた自殺は、労災として認められることとなり、自殺認定の枠も広がったこととなる。また、労災認定の対象は心因性、内因性に限らずICD-10(WHO)に規定される全ての精神疾患となったため、精神疾患発症時点から遡って6ヶ月間の業務過重性の有無が業務上外の判断の決めてとなることは言うまでもない。したがって不眠不休で疲弊消耗した状態や、労働者を自殺へ追い込むほどの大きな業務上の出来事が存在したか否かを、上記の判断指針に基づいて業務上外の評価をすることになる。

 

 

IV.長時間の時間外労働と自殺

I.はじめに
II.精神疾患の労災補償状況の年次推移
III.過労自殺の労災認定に関して
IV.長時間の時間外労働と自殺
V.家族、職場が気づいた自殺の兆候
VI.労働者の心の健康の保持増進のための施策
VII.今後の課題

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