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No.2 長時間の時間外労働と自殺
〜過労自殺について〜

東邦大学佐倉病院精神神経医学研究室 黒木宣夫
イラスト 佐藤ゆみこ


VI.労働者の心の健康の保持増進のための施策

2004年8月に「過重労働とメンタルヘルス対策の在り方に関する検討委員会9)」の報告書が厚生労働省から公表された。メンタルヘルス対策に関しては2002年8月の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」によると(1)セルフケア、(2)ラインによるケア、(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア、(4)事業場外資源によるケアの4つのケアにより心の健康づくりを進めることを基本にし、自殺を予防するためには、うつ状態に早期に対応する必要があること、家族によるケアも重要で家族が相談する窓口を明確にすること、労働者の意見を汲みあげながら労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用した労使の自主的取組が重要であることが強調された。さらに、管理監督者の役割が、適切な業務管理と情報の提供や相談窓口に繋ぐなど、明確にされたのも大きな特徴として報告書に記載されている。

2006年4月から改正労働安全衛生法(平成17年法律第108号)10)が施行されているが、労働者の時間外労働(週40時間を基準とし、そこからの超過分)が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、事業者は原則として労働者に医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。)を行わなければならないとされた。また、1月当たり80時間を超えた場合も、事業者は労働者に医師による面接指導等を実施するよう努めることが求められている。さらに、衛生委員会の調査審議事項として、長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策及び労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策を行うことが記載されている。したがって、今まで形骸化していた衛生委員会を活性化することにより、より事業所に合ったメンタルヘルス対策を立てることが要求され、月1回衛生委員会を開いて議事録を残しておくことが必要となったのである。

 

VII.今後の課題

I.はじめに
II.精神疾患の労災補償状況の年次推移
III.過労自殺の労災認定に関して
IV.長時間の時間外労働と自殺
V.家族、職場が気づいた自殺の兆候
VI.労働者の心の健康の保持増進のための施策
VII.今後の課題

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