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こころの健康シリーズZ 21世紀のメンタルへルス

No.1 高齢者のグループリビングを推進するCOCO湘南の歩み

NPO法人COCO湘南 理事長  西條節子


既成の箱物はいや!土台をしっかりと!研究会の歩み

 元気な高齢者のグループリビングCOCO湘南台を開設したのは1999年。日本で初めてのことだった。その後、地域の協力を得ながら一つ一つと増やしていった。こうした参加型福祉は多くの人の共感を呼び、開設前の1996年から3年間は、毎月1回、日時、場所を固定して研究会を行った。女性9名、男性7名のメンバーは医師、看護師、介護職員、生協役員、教師、市議会議員、建築士など多岐にわたり、この他に作家、弁護士、ジャーナリスト、地域の高齢者などがオブザーバーとして参加して、どんな暮らしをしたいのか、どんな施設にするのかなどの話し合いを重ねた。「資金はどうなっているの?」「建設用地は?」と聞かれても「ありません。有るのはメンバー16人の知恵だけ」という状況だが熱意だけはあった。そこで議論されたのは以下のような項目だ。

@現在の高齢化社会と将来の姿
Aどこでどのような暮らしを望むのか?暮らしの情報とサポートの現状
B暮らし方とその費用(生涯)
C高齢期、高齢期に入る人(特に女性、単身者)の実状と経済状況
D元気に暮らすための「自立と共生」の提案
E行政との関係の持ち方(要望や提案)
F保健、医療、福祉施設など関連機関とのネットワークの構築
G社会的資金の活用

安心ネットワーク(医療・看護・介護)

 上のFの保健、医療、福祉施設など関連機関とのネットワークの構築について、具体的に紹介したい。当初、私たちにはこうしたネットワークがなかった。施設は藤沢市内に作ると考えていたので、まず藤沢医師会館に行って医師会長を紹介していただいた。医師会長は藤沢市民病院創設時の元内科部長だった金子儀一先生とのことで、早速アポイントを取りご自宅を訪ね、私たちの30頁程の要望書をお渡しして説明した。金子先生は、ご自分の病院にも高齢の外来患者が多くなり、医者として、これから高齢者に何が出来るかを考えていたとおっしゃり、私たちの話を熱心に聞いてくださった。私は若林病院(現湘南中央病院)の役員をしていたことがあり、そのことを金子先生は覚えていて下さり話がはずんだ。そして金子先生は、「来月、藤沢医師会の理事会があるので、そこでこの要望書を配り、理事の皆さんに説明し協力を要請する時間を作ってあげよう。ただし、皆忙しいので10分位の説明にしてください。」と、特別の計らいをして下さった。これが地域医療との暖かいネットワークを構築するきっかけとなった。人との縁、人間関係の重要性をあらためて感じたものだ。医師会の理事の中にも、今井重信先生(中央病院)や後藤先生(医師会副会長)など面識のある先生がいて、「用地が湘南台7丁目なら近くで開業している西郡先生を紹介しょう」という約束をしてくださったりして、10分の予定の説明時間をかなりオーバーしてしまった。その時にご紹介いただいた西郡先生には、その後、COCO湘南台で実践することになるターミナルケアでたいへんお世話になり、素晴らしい力を発揮してくださることになるとは想像できなかった。
 COCO湘南台が開設して3か月の頃、入所している女性が、胃痛で七転八倒し西郡先生に往診をお願いした。そして病院を紹介していただき検査をしたら胃がんだった。胃の全摘出手術をしなければいけない状態だったが、その女性は手術を拒否し、入退院を繰り返しながら、最後は自宅、つまりCOCO湘南台の自室で迎えることを望んだのだ。私たちはその女性の思いを尊重しようと、病院、訪問看護、介護ヘルパー、介護支援センターなどさまざまな人や機関と連携し、亡くなるまでの3年間、全力でサポートした。医師、看護師、介護士など、さまざまな職種が熱意を持って結びつき、COCO湘南台でのターミナルケアが形作られていった。その女性が、皆に囲まれ安らかな最期を迎えた時、介護に携わった若いヘルパーは感動で体を震わせていた。  この4月には日本財団の支援を受け訪問看護センターが開所し、医療・看護・介護の3本柱とネットワークを結ぶことができた。この3つの柱を上手く活用し、連携して、安心して暮らせるようにしていきたいと思う。  また、国の指導で、藤沢市は市を13の地区に分け、そこにサテライト型の包括支援センターをスタートさせた。しかしまだ、住民が利用しやすいものとはなっていないようなので、いつか住民参加型の包括支援センターになることを願っている。それは、そう遠くはないと思う。そのために私たちも出来るかぎりの協力をしていきたい。

3.COCO湘南が産み出した共生の基本理念

1.‘はじめに’の前に一寸…街の中で暮らす場/はじめに/NPO法人COCO湘南のスタート(研究会の立ち上げ3年)
2.既成の箱物はいや!土台をしっかりと!研究会の歩み/安心ネットワーク(医療・看護・介護)
3.COCO湘南が産み出した共生の基本理念
4.グループリビングの全国普及/‘終わり’の前にも一寸…自己決定/終わりに

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