株式会社日立製作所 労政人事部神宮純緒
イラスト 橋本直美
なぜ人財活性化施策が必要か
労働環境の変化
近年の労働環境には、急激な経済状況の悪化、雇用形態の変化、徹底的なIT化戦略による職場内コミュニケーションの希薄化等、従業員の不安や焦燥感を助長する要因が散在している。平成19年の労働者健康状況調査(厚生労働省)をみても、仕事や職業生活に関する強い不安・悩み・ストレスがあると訴える従業員の割合は実に6割を超える勢いである。一方、共働き世帯の増加により育児や介護を分担しながら働く従業員も増加傾向にある。今後15年で高齢者の占める割合が人口の30%に達するとの予測がある中で、要介護認定者の割合も必然的に高くなることが想定され、働き盛りの従業員が介護に従事する確立も高くなる。このような状況下において従業員に成果を出し続けてもらうためには、職業生活のみならず私生活においての安定も大きな課題となり、企業にはその要素を組み入れた施策の立案が必要になってくる。
従業員の意識の変化
外部環境や労働環境の変化により従業員自身の意識も変わりつつある。例えば、学生が企業を選択する際の条件として考慮する項目において、これまで重視されてきた「企業の理念」「成長性」「社会への貢献度」だけでなく、「仕事もプライベートも充実させられること」「性差に関係なく活躍できること」「職場に活気があること」など働きやすい会社であることが重要視されるようになってきた。働き方の多様化や個々人の価値観を尊重する意識が高まり、企業選択の視点にワークライフバランスの実現が必須項目として盛り込まれているわけで、これらを提供できない企業は苛烈な人財獲得競争に勝ち残れなくなるということになる。
当社が考える人財に関する課題
2007年の人材白書(日本経営協会)によると、企業が人財に関し課題だと感じていることのトップに「管理職の力不足(39.3%)」、次いで「組織全体に活力がない(33.7%)」、「職場のチーム力が弱い(21.3%)」が続く。また平成18年度の国民生活選好度調査(内閣府)では、7人に1人が職場に相談相手がいないという結果が出ている。
私が入社した90年代前半には、仕事以外のイベントや各種活動を通じて人との繋がりを感じられる機会がたいへん多くあった。職場においては、人間力に優れ周囲からも信頼される人財がリーダーとなり、その人を中心に明確な目標と役割分担の下仕事をしたものだ。公私に渡り何でも相談できる雰囲気は働く人々が意識せずとも確立されており、そのような環境を会社が自然に提供していたものと思う。後の日本経済の低迷とともに当社の業績も悪化、事業の再構築や徹底したムダの排除により一般行事的なものは縮小・廃止・中止され、組織そのものも人員が大幅に削減された。ひとりひとりの業務負荷は高まり、管理職が率先して前線に出て活動することが常態化し、後進の指導に注力する余裕がなくなってきている。つまり、当事者が自らコミュニケーションを取るという気持ちを持たない限り他部署の人とはおろか、自分の上司や同僚とのコミュニケーションも取りにくい環境になってしまっているということである。
これらの状況を振り返り、当社では職場の活性化には「コミュニケーション」が不可欠であると考え、その機会を増やすと同時に、職場の核となる管理職層のコミュニケーション能力の強化に取組んでいる。

人財活性化に関する当社の取組み
はじめに
なぜ人財活性化施策が必要か
人財活性化に関する当社の取組み
まとめと今後の課題