予備校生(浪人生)は、現役で大学を受験して不合格となり、その挫折を受け止めて翌年の受験を目指すという立場である。彼らは、同学年の人からはじめて1年遅れてしまうという悔しさや情けなさ、現役で合格していたなら払う必要のない予備校の学費を親に出してもらっているという負い目や申し訳なさなどの気持が混在している状態となる。
予備校生は、心理発達段階においては青年期に相当するのでアイデンティティ(identity)の確立という課題に取り組む時期である。「自分とは? 自分らしさとは?」という問いに対する答えを模索するのであるが、予備校生はある意味では志望大学に合格しないと「自分」や自分らしさが獲得できないと考える側面があり、それゆえの苦しさを抱えている場合がある。また、将来一人前の大人になるという「自立」の前段階として、大学受験という段階において経済的なこと以外の自分のこと(大学受験に関すること)は自分の責任で行うという意味での「自律」がテーマとなる。 大学受験は、自分の将来についてある程度見通しをもち、志望大学や学部学科などを進路選択することが必要である。つまり自分はどうなりたいのか、どのように生きていきたいのかについて自己分析して、まずは目前の志望大学合格という自己実現を目標として受験生活をおくるのである。
このように予備校生は、予備校での一年間に、現役の高校生時代よりも自分と向き合うことが多くなるため様々な悩みやストレスを抱えることになる。したがって、予備校生の保護者をはじめとして、予備校の講師やスタッフ、場合によってはカウンセラーの適切な支援が必要となることも多いのである。 |