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こころの健康シリーズVI 格差社会とメンタルヘルス

4 学校メンタルヘルスと教師の役割

中越学校メンタルヘルス研究所  井上 惠


2.学校メンタルヘルスについて

 メンタルヘルス不良の子どもはその能力を発揮し伸張するのが難しいものです。(参考1)2))心配や不安で心がいっぱいの子どもは容易に「教室のお客さん」になってしまいます。

 そして子どもは保護者に大きく依存していますから、保護者のメンタルヘルスは子どもに大きく影響します。保護者のメンタルヘルス悪化は鬱病の増加とパラレルであり、日本の相対的貧困率やジニ係数の高さと深い関係があります。(参考4)6))要保護および準要保護児童生徒の割合は、相対的貧困にある家庭の割合とほぼ同じであり(参考4))、これらの児童生徒割合とそれぞれの状況を確実に把握することが教員には必須です。

 また昨今、精神疾患のため病休に陥る教員は増加の一途をたどっています。6ヶ月以上の病気休職に至る教員のうち、その事由を精神疾患とする割合は62%近く(2011年度)に上り、これは他の業種に比べても有意に高いものです。(参考5))

 1人の教員が倒れると、その背後に数十人から場合によっては数百名の子どもに影響があります。その意味でも、教員のメンタルヘルスもまた子どものメンタルヘルス保持にとって大切なものです。

 さらに、数十年前までは「生存への不安」が前面に出ていたメンタルヘルスの問題は、今や「実存への不安」を抜きにしては議論できなくなっています。(参考1)3)等)

 便利な世の中になり、ボタン一つでいろいろなことが出来る、たいていのことがお金で叶えられるかのようになっています。しかし、例えばスマホで遙か彼方の人と繋がっている感覚が持てるのに、そのスマホの内に絡め取られ繋がれてしまい、生物としての時間感覚や身体性から乖離した生活に容易に陥ってしまいます。これほど多くのモノに囲まれているのに、不安や猜疑心、欠乏感に苛まれるのです。

 科学技術の発達は人間の可能性を広げました。それは同時に限度を超えた万能感も日常的となり、それが叶わぬ時には、過去の人間が感じ得なかったであろう落胆や悲哀に出会います。これが、ここ数十年で加速したメンタルヘルス悪化の特徴です。

3.事例を一つ

1.はじめに
2.学校メンタルヘルスについて
3.事例を一つ
4.学校メンタルヘルスにおける教師の役割
5.おわりに〜格差社会とメンタルヘルス

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