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こころの健康シリーズZ 21世紀のメンタルへルス

No.10 災害時のメンタルヘルスを守るために

宮崎大学医学部看護学科  原田奈穂子


お見舞い

 本原稿にお声かけ頂いた間にも日本では大阪での地震、西日本の豪雨災害が起き、世界各地でも自然災害や人道問題は起きていました。大阪での地震、西日本豪雨災害の被害を受けられた方に心からお見舞いを申し上げるとともに、対応されている支援者の方々に労いの言葉をお届けしたいと思います。


はじめに

 本原稿では災害時における個人のメンタルヘルスではなく、コミュニティのメンタルヘルスについて述べていきたい。個人のメンタルヘルスや災害時の心理的影響については本稿の読者の多くは筆者よりも博識であると思われるし、多くの文献が既にある。医学研究の結果をまとめるより、筆者の属する看護の視点でコミュニティにおけるメンタルヘルスについて私見を述べたい。他国における災害時の対応と比較して、避難所に滞在する時間が長い日本では避難所の環境を整えることも重要であると考える。そして避難所だけでなく、あらゆる支援においては複数の領域が協働と連携をしながら支援をすることが不可欠であると考える。避難所の環境を整えることがメンタルヘルスに環境があるかの根拠はBrewinらの2000年のメタアナリシスやChanらのハリケーンカトリーナ後のメタアナリシス(2014)による。これらの研究結果は生活上の困難や不十分な社会的サポートはPTSDの関連要因であると示唆している。


「災害」とは

 災害とは国連国際防災戦力事務局(UNISDR)によると、「コミュニティまたは社会の機能の深刻な混乱であって、広範な人的、物的、経済的もしくは環境面での損失と影響を伴い、被害を受けるコミュニティまたは社会が自力で対処する能力を超える」事象である。他にも災害の定義は種々あるのだが、筆者が本定義を頻用する理由は「被害を受けるコミュニティまたは社会が自力で対処する能力を超える」という部分が入っているからである。コミュニティまたは社会のレジリアンスによって、事象は災害にもなり得れば、ならないこともあることを包含する定義は他にあまり類を見ない。本稿で述べたいのは、被害を受けるコミュニティのレジリアンスが高ければ、被害を受けなかったコミュニティは何もしなくてもいいというものではない。レジリアンスがどれほど高くても傷つくことやダメージを受けることがない訳ではない。被害を受けたコミュニティのレジリアンスを損ねることなく、回復のプロセスを促進できるような関わりが、被害を受けなかったコミュニティに属する者に求められるのではないだろうか。

「避難所での滞在時間の長い日本」

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「避難所での滞在時間の長い日本」
「複数の領域における協働と連携」

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