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こころの健康シリーズZ 21世紀のメンタルへルス

No.2 多世代型シェアの試み
−コレクティブハウスとホームシェア−

日本大学文理学部社会学科  久保田裕之


はじめに:世代を超えて共に生きる

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 家族でも恋人でもない他人同士が集まり暮らす「シェア」は、長らく日本では受け入れられないと言われてきたものの、近年では空前の「シェアブーム」が生じている。もちろん、高度経済成長期には、地方から都市に出て来た学生や「金の卵」と呼ばれた集団就職者たちは、学生寮や社員寮といった大学・企業に紐付けられたコミュニティに支えられることで、慣れない都市生活に順応してきた。その後、景気の後退と個人主義化に伴って、こうした集団生活が敬遠されるようになると、とりわけ1976年に新宿区西早稲田に日本で初めてのワンルームマンションが登場して以降、独身単身期間の住居はどれほど狭くてもどれほど割高でも、(実家かさもなければ)一人暮らしが標準となっていった。これに対して、90年代頃から晩婚化・未婚化による若年単身期間の延長を背景に、インターネットの普及などに後押しされる形で、より現代的な他人との共同生活=「シェア」が再発見されていく。現在では、日本のドラマや映画の舞台として、あるいは、「テラスハウス」に代表されるリアリティドラマに不可欠の要素として、若者同士の自由で対等な共同生活は、当たり前のように描かれるようになっている。

 しかしながら、現在注目されている住居の「シェア」は、同世代の間の互助的なものがほとんどであり、世代を超えた助け合いや支え合いを含むものはごく僅かである。もし「シェア」が、未婚化や晩婚化を含む家族の変化へのある種の対応策として注目されつつあるのだとすれば、単に心身の丈夫な若年期における短期的な協同生活であることを超えて、世代を繋ぐ互恵的な生活の拠点としてより重要な位置づけを獲得しうるのだろうか。

 そこで本稿では、現在日本で普及しつつある同世代型の「シェア」と対比しながら、国内外で試みられている多世代型の「シェア」の試みを紹介していきたい。

2.近年の共同生活への眼差し:シェアハウスとグループリビング

1.はじめに:世代を超えて共に生きる
2.近年の共同生活への眼差し:シェアハウスとグループリビング
3.多世代型コレクティブハウスの試み:合理的で民主的な協同生活の運営
4.世代間ホームシェアの試み:高齢者の居宅を利用した若者との共同生活/おわりに

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