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こころの健康シリーズ\ 現代の災害とメンタルヘルス

No.8 サイコロジカル・ファーストエイドについての
一般の人々の理解を深めるための解説

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
行動医学研究部 災害等支援研究室 室長  


おわりに

 大規模な災害、事件・事故等では、大勢の人がそのストレスによって苦しむことになる。そうした際のこころのケアは、必要であるものの専門家が行うものであるという認識が一般的ではなかろうかと思う。しかし、未曾有の出来事を目の当たりにして動揺するのは当たり前のことであり、一般の被災者に起こるこころの変化には、治療やカウンセリングというよりも、基本的なニーズを満たせるように気を配ってくれる人がいてくれることや、心配して声をかけてくれる人がいるということが大きな支えになることがある。だからこそPFAは被災者と接する可能性のある多くの方に、広く知っていただきたい支援方法でもある。

 一方で医療関係者にとっては、臨床では患者の苦しみに共感の姿勢を示すことは重要とされ、時には信頼関係も生むが、一般の被災者の抱えるこころの苦しみに対しては、理解者という立場で接することが、逆に相手の気持ちを逆撫で大きなストレスを与える可能性があることを念頭におく必要があるだろう。平時と緊急時の対応に大きな違いはないものの、共感のような普遍的と思われるコミュニケーションスキルであっても、時と場所が違えば全く反対の効果を生むことからもわかるように、その境界線をあまりに薄くさせてしまうと、PFAにおけるDo No Harmの原則に反する恐れがあることも考慮しておくべきであろう。

 WHO版PFAのガイドラインや研修会の情報は、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所ストレス・災害時こころの情報支援センターのwebサイトに掲載されているので、ご参照されたい。
https://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/research_top_detail.php?@uid=KRLjKa8fZGgUFzEn

 

参考文献
[i] van Ommeren M, Saxena S, Saraceno B : Aid after disasters. BMJ 330: 1160-1161, 2005.
[ii] Van Emmerik, A.A.P., Kamphuis, J.H., Hulsbosch, A.M., Emmelkamp, P.M.G. : Single session debriefing after psychological trauma : a meta-analysis. The Lancet, 360, 766-771, 2002.
[iii] Brewin CR, Andrews B, Valentine D : Meta-analysis of risk factors for posttraumatic stress disorder in trauma-exposed adults. J Consult Clin Psycho 68 : 748-766, 2000.
[iv] Shultz M, Forbes D : Psychological First Aid : Rapid proliferation and the search for evidence. Diaster Health 2: 3-12, 2013.
[v] World Health Organization, War Trauma Foundation and World Vision International, Psychological first aid : Guide for field workers, WHO : Geneva, 2011.[心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド :PFA)フィールド・ガイド.(独)国立精神・神経医療研究センター ,ケア・宮城, 公益財団法人プラン・ジャパン訳, 2011.]

 

はじめに/1.サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)
2.PFAの概要と活動原則
3.支援者自身のケア
おわりに

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