思春期問題研究所所長 江幡玲子
「思春期の性について話してください」という依頼を受けることがあります。
男の子のですか?女の子のですか?と聞きますと、「いいえ、あの思春期のです・・・」と言われますが、その思春期だって男性と女性がいるのです。
思春期の性といえば、女の子の月経と避妊の話だけだと思っているわけではないと思いますが、どうしても“思春期の性イコール女の子”となりがちのようです。
性について考えるとき、同時に人間そのものについても考えなければならないわけです。
医学、心理学はいうに及ばず、文学、社会学もあらゆる方面からの接近が試みられています。避けて通れない課題でもあるのです。
まずこの4つの方向から考えてみると“人間”が見えてくるような気がします。
男女がいくら“同じ”であるといっても、性に関する点だけは形も機能、つまり働きも役割も全く違っていることは誰でも知っています。問題なのは、どの程度に知っているかということです。ここが大変に難しいところであるのです。その上に、人間には、個人差があります。一人一人違うのです。なんとなくわかりあえる部分もあるし、同性であってもわかりあえない時もあります。親子であっても思いも及ばないことさえあります。
赤ちゃんが、ほんのちょっと見ない間に、はいはいから歩いていたり、言葉が話せるようになったりしているように、思春期の成長も、しばらく会わない間に背が伸びていたり、ふっくらとしていたりします。それは外観だけではなくて、体の働きそのものが成長、変化しているのです。

−友達がナプキンはどれがいいとか、便利とか話している時に、私は、よくわからなくて仲間に入れないのです。“私もわかるよ”って言っても笑って相手にしてもらえません。どうすれば良いでしょう……と、電話で相談してきた中1の女の子。
−体育の時にどうしても心配なのでタンポンを使いたいと思いますが、先生はまだ早いと言います。それにちょっとこわいような気もします……と電話をかけてきたのも中1です。
高2くらいになれば、だいたいみんな同じになるのですが、12歳〜16歳頃の差は大きく、どこまでどのように答えてよいかと、とまどうこともあります。
−どうして薬局では、ピルが買えないのですか?お医者さんに一人で行っても、ちゃんと話を聞いてピルを買えるようにしてくれますか?という、自分の住所と名前を書いた質問用紙を手渡された時は、一度会ってみたいと思いました。表面的には特に問題の感じられない少女でしたが、実は……の次に話されたことは世間で言う大人の女性の問題だったのです。
20歳といえば大学2年生、教育実習に行ったら「性教育の授業」もしなければならないのです。そんな学生たちと、まず自分自身の月経について考える時間を作っています。自分の月経の記録は自分の人生の記録であるし、自分の身体の変化、リズムをきちんと知ることは、自分を大切にすることだから……という気持ちから話を進めていきます。
きちんとノートにつけている人、前回の月経の日も忘れてしまっている人などいろいろです。まず、記録をつけることにします。レディーズメモリー(Lady's
Memory)という小さいノートがあります。10年間使えます。
- 周期……月経の始まった日から、次の月経の前日までをいい、25日から38日くらいの間で変動するのがふつうであり、個人差があります。ぴたりと同じ月はありません。
- 持続日数……血液のでている日数で、3日から7日くらいがふつうです。
基礎体温・排卵・経血の量・おりもの・月経痛などと話していくと「はじめて聞いた」と言います。本当は初めてではないのです。いろいろな機会に聞いているのです。その時は必要でないから覚えていないのです。
自分にあったように、必要な時に聞いてこそきちんと理解できるのです。何回も繰り返しても、知りたい時に知るということが性に関わる知識には必要なのです。