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過重債務者問題研究会 主宰 松井正人 貸金業法の改正と闇金規制の強化 転機は平成15年に起きた大阪八尾市の心中事件である。八尾市の60代の夫妻とその家族が、闇金の厳しい取立てに耐え切れず鉄道に飛び込み心中をした事件だ。さすがに政府は大きく動いた。闇金規制を強化し過重債務者問題を解決するため、さらに厳しい貸金業法が平成18年に成立し平成22年までに完全施行されたのだ。主な規制は、正当な企業しか貸金業を経営できない参入規制(資本金5千万円以上)、顧客目線で業務を行うため貸金業取扱主任者の国家資格化、取立て行為の更なる規制と強化(懲役2年)、無登録営業の罰則の強化(懲役3年→5年→10年)、原則年収の3分の1までしか借りることができない総量規制と、返せない人へは貸してはいけないと言う与信の強化だ。生命保険の担保も原則禁止された。取立て行為規制の中に他から借りて弁済させることも含まれるようになった。正規の貸金業者は、「お金がないなら親戚からでも借りて返してください」と言っただけで最高懲役2年の刑事罰を科されるようになった。 消費者庁の発足平成21年9月1日は、我が国の方向が大きく変わった歴史的瞬間であった。消費者庁の発足である。企業に比べて明らかに情報量の少ない消費者が、適切な判断のもと適正な社会生活を営めるように、企業側を規制する法律を所管し大きな権限を持った行政庁が誕生したのだ。実は企業経営者でもあまり実感していないが、消費者関連の法律を見るとそれがわかる。資料1は、不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景表法)の目的条文である。平成21年8月末日までは、消費者関連の法律の目的は企業の公正な競争を確保したうえでの消費者保護だった。これは第二次世界大戦後の我が国の復興を考えた場合は当然のことである。まずは健全な企業を育成し、公正な競争を行わせたうえで経済発展していく必要があった。しかしバブル景気を経験し名実ともに成熟した我が国においては、もはや企業の公正な競争を法律で保護する必要性は薄れてきた。消費者も権利意識が強くなり、いろいろな選択肢の中から顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)を最大化する商品を選択できるようになった。企業側も必要な基幹産業は形成されているので、国が手取り足取り企業を振興するよりは社会生活に必要な企業の育成が求められているのだ。これが企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)である。このような中で、消費者を誤解させあたかもCSが高いと誤認させるような商売を規制しようというのが現在の消費者関連の法律だ。また、インターネットなどの普及により企業側も率先して企業イメージ(CI:Corporate Identity)を高めていく必要性が生じている。顧客からの不満足の表明はその企業の存続を危うくするほどの影響がある。そのため多くの企業がCSを増大することを第一に考え、自社がいかに社会に貢献しているか、CSRの高い企業であるか宣伝している。貸金業者も例外ではない。返済が計画通りにいかなくなった顧客に対して、丁寧に対応して通常の生活を行えるように一緒に考える業者も現れた。地域に溶け込んでお金の問題をはじめ様々な社会問題を一緒に考える活動を行っている業者もいる。 (資料1)
1.はじめに/過重債務者問題とは/借金は悪なのか |
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