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こころの健康シリーズ[ 国際化の進展とメンタルヘルス

No.8 「生活者」としての在日外国人のこころの健康とその支援

長崎県立大学看護栄養学部 李 節子


2.「在日外国人」とは

 まず、「在日外国人」の定義について考えてみたいと思います。なぜならば、在日外国人のこころの健康支援にあたり、対象者は誰かを知ることは絶対的に必要な基礎知識・前提条件だからです。 これまで、「在日外国人」とは日本に暮す外国人の総称として用いられ、概ね「日本で暮らしている外国人」という意味で用いられています2)。大辞林 第三版の解説では、「在日外国人」を「日本に居住する外国人」とあります。 一方、日本における外国人は、その滞在・居住・生活実態によって、さまざまに呼称・表現がされています。概ね5年以上の居住者を「定住外国人」、短期の在留者をNGO等では「滞日外国人」と呼称することもあります。自治体行政などでは地域に暮す外国人を「外国籍住民」「外国籍市民」「在住外国人」などと表記しています。2012年、総務省は日本に暮らす外国人にも住民基本台帳制度を適用し、「外国人住民」と表記しました。法務省は、「出入国管理及び難民認定法」上の在留資格をもって、三カ月以上日本に在留する外国人「中長期在留者及び特別永住者」を「在留外国人」としています。観光庁は、観光で訪れる外国人を「訪日外国人」と呼んでいます。2018年12月25日、日本政府は「外国人材の受入・共生のための総合的対策」を発表しましたが、ここでは「外国人材」と名付けました。 現在、日本に暮らす外国人(住民基本台帳に登録されている人口)は、約300万人です。この人口は、徳島県、高知県、島根県、鳥取県の4県の人口に匹敵します。明らかに、日本社会の構成員であり、市民であり、決して「見えない・存在しない」のではなく、「共に生きている隣人」「共に暮らす生活者」として、そこに実在しています。 1910年代から日本に移住した朝鮮半島出身者(日本国籍を有していた者)とその子孫である「特別永住者」・韓国・朝鮮国籍(出身地)者の日本での生活の歴史は100年以上に及び、5〜6世代目が日本で誕生しています(在日コリアンと呼称されることもあります)。 その方々も含めて「在留外国人」とすべて呼称していますが、その生活者としての実態と歴史的背景の重みから解離しているように思えます。しかし、どのような文言が日本語に存在するでしょうか?みあたりません。これこそが、日本における「外国人」移民政策の問題の本質であるように思えます。 医療人として、日本の保健医療福祉の現場で実際に出会う外国人は、数日滞在の「訪日外国人」から、世代を重ねた「特別永住者」まで、その在住する期間、社会的背景、在留資格を問わず、「日本における外国人」すべての方です。そこで、筆者は「在日外国人」の定義を、包括的に「日本に在住するすべての外国人」と定義し、「在日外国人の健康支援と医療通訳 誰一人取り残さないために」の中で発表しました3)

 

3.在日外国人の健康課題/おわりに

はじめに/1.移住者の健康リスクについて
2.「在日外国人」とは
3.在日外国人の健康課題/おわりに

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