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いじめ問題の今

埼玉大学教育学部 教育心理カウンセリング講座 坂西友秀

イラスト 谷口 智子


どのようにしていじめるの?

調査開始時と現在では、いじめの方法・内容の区分の仕方が異なる。それにもかかわらず、いじめの手口は、大きく変わることなく、「仲間はずれ」・「無視」・「陰口」が主要なものである。中学校でも小学校同様であった。調査開始以来、いじめは、ことばによるいやがらせと身体的な暴力が上位を占めている点で、共通している。新たに加わった特別支援学校でも、主ないじめは小・中・高等学校と同じ傾向にある。

毎年の調査で認められる特徴は、いじめの発生が中学1年生でピークに達することだ。小学6年生までいじめは漸増し、中学1年生で激増する。その後高校生で発生件数は減少する。2010年度を例に見ると、小学6年生の6,530件から中学1年生の15,906件へと2倍以上に跳ね上がっている。注意しなければならない点は、小学校に入学したばかりの1年生ですでに3,833件のいじめが発生し、2年生では5,157件も発生していることである。いじめは、学年を問わず起こるということである。

いじめっ子・いじめられっ子は決まってる?

いじめは表からは見えにくい。事態が進行し、窮地に追い込まれた被害者が「悲鳴」をあげ、事件化して初めて発覚することも多い。被害者の子どもがいたたまれず、自殺してしまうのは最悪の事態である。子どもの自殺者数は、はっきりしない。統計の取り方によって、人数が異なるからだ。2009年の警察庁の調べでは、「いじめ」による自殺に分類された中学生は5名である。一方、同年の文部科学省の統計では、中学生1名、高校生2名だ。いずれにしても、誰からも救いの手がさしのべられず、孤独の中で自ら命を絶つほどに、いじめは「残酷」なものである。このことは、いくら強調してもしすぎることはない。2010年の警察庁の資料では、いじめが自殺の原因であると認定された中学生は、3名(男1名、女2名)もいる。こうした状況を見ると、いじめが依然として深刻な問題である事が理解できよう。 いじめ

原因・動機

図2 いじめの原因・動機

いじめは表面化しにくいが、被害者は心身の苦しみをシグナルにして発している。体調の不調を訴えたり、時には不快な場面でことさら明るく振る舞うなど、何らかの兆候があることが多い。いじめに気がつくきっかけは、「学校側のアンケート等取り組み」と「担任教師」が3割から5割、「本人からの訴え」が2割から3割、「保護者」が1割から3割弱である。学校の先生・家族・友だちなど身近な人に「いじめ」を話す子どもの割合は、5割から8割に上る。子どもは救いの手を求めているのだ。

いじめは、いつでも、どこでも、誰にでも起こり得る(図2)。決まった子どもだけが加害者あるいは被害者になり続けることは少ない。状況が変われば、加害者が被害者になり、被害者が加害者になる、両者の入れ替わりはたやすいことだ。子どもの8割は、いじめ・いじめられ経験があり、いじめ問題は特定の子の特殊な問題ではない。だれもが加害者になり、被害者になる危険があるのだ。子どもが発信する「いじめ」のサインを見逃さないことだ。

 

 

3.被害者の痛みがわかる?〜同居するいじめる心・いじめられる心?

1.昔からいじめはあった〜いじめは減った?
2.どのようにしていじめるの?〜いじめっ子・いじめられっ子は決まってる?
3.被害者の痛みがわかる?〜同居するいじめる心・いじめられる心?

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