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こころの健康シリーズ[ 国際化の進展とメンタルヘルス

No.11 「外国人児童生徒」のメンタルヘルス〜支援の現場から〜

愛知教育大学日本語教育支援センター 菅原雅枝


はじめに

 1990年の入管法の改正で日系三世までとその家族の就労に制限のない「定住者」という在留資格が創設され、日系人が多く暮らす南米から就労を目的として来日する人々が急増した。かれらと共に来日した学齢の子どもたちは、日本語が全く話せないまま、地域の学校に編入することになった。以来、日本語日本文化を大前提として教育活動を行ってきた学校現場は、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ外国人児童生徒教育の歩みを進めてきた。

 私は、外国人児童生徒の支援者として、また、外国人児童生徒に関わる支援者や教員の養成・研修担当者としてこの問題に関わってきた。子どもたちの心を支えることの重要性は日々感じてはいるものの、子どもたちのメンタルヘルスの問題に回答が出せるような専門性は持たない。本稿では、私が見聞きしたことを基に、子どもたちが感じているストレスをその背景とともにお伝えしたい。こうした状況にある子どもたちをどのようにして支えていくのか、私たち大人に何ができるのか、一緒に考えていただければ幸甚である。

イラスト1

 

外国人児童生徒とは

 「外国人児童生徒」ということばからどのような子どもたちを想像するだろうか。文部科学省の平成30年度調査では、国内の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国籍の児童生徒は40,485人である。一方、日本国籍だが日本語指導が必要な児童生徒は10,274人、日本語指導の必要はないと学校が判断した外国籍の児童生徒数は5万人を超える。国境を越える移動が当たり前になっている現代では、日本国籍を持つことと日本語を話し日本風の習慣・価値観を身に付けていることはイコールにはならない。メンタルヘルスという視点から日本の学校に通う子どもたちを語るとき重要なのは国籍ではなく、かれらが学校のマジョリティである日本語・日本文化とは異なる背景をも持っているということである。したがって、「『外国人』児童生徒」と表現されてはいるが、日本人の両親のもとに生まれ幼少期に海外に渡り現地の教育を受けて戻ってきた子や、本人は日本生まれで日本語しか話せないが日本以外の文化を持つ両親や祖父母と共に暮らす子も含めて話を進めたい。

 

外国人児童生徒への支援に関わる人々

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