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こころの健康シリーズ�] 成人の発達障害とメンタルヘルス

No.6 成人期発達障害の自助活動について
〜25年を振り返って、これからを考える〜

NPO法人 DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表 広野ゆい


4. セルフヘルプ支援センターと「関西ほっとサロン」の立ち上げ

 前述のとおり、発達障害の自助活動自体は成人期の発達障害の支援が本格的に始まる前から、医療や福祉の支援がほぼ受けられない状況の中、全国で始まっていた。しかし、すぐ揉め、すぐ潰れてしまうことが多く、一年続けば良いほうであった。

 近くのグループもなくなるらしいと聞き、私はすでにつながりがあった北海道や東京の仲間の助けを借り、2002年に兵庫県芦屋市でADHDのグループ「関西ほっとサロン」を立ち上げた。そしてどうすれば続けられるのか、本やネットで情報を探しはじめた。「12ステップ」などは我々にはハードルが高そうであるし、自分の生活自体がままならないのに親の会のような組織的な活動はもっと無理である。そうこうしているうちに、偶然歩いて行ける距離に「ひょうごセルフヘルプ支援センター」があると知ってすぐに相談に行くことにした。

 そこでセルフヘルプ論を研究している中田智恵海先生に出会い、運営の方法や悩みを相談することができた。兵庫県だけでも400以上のセルフヘルプグループがあった。難病、精神疾患、不登校の親など様々なグループの話を聞いた。困難の数だけセルフヘルプグループがある。当時は発達障害自体がまだあまり知られていなかったが、何らかの困難があって、グループをつくりたいといえば相談にのってもらうことができた。相談窓口で大人には発達障害はないなどと説教されるようなことも珍しくなかったため、ADHDが存在するしないとかが問題にならないのは本当にありがたかった。

 今でこそ本名で活動したり本を出したりが当たり前になったが、当時は発達障害と診断されても、家族や職場や近所に知られないように名前や素性を隠してグループに参加する人が多かった。そういった匿名性の高いアノニマスグループということもあり、支援センターで知り合ったLGBTのグループとは共通点が多くすぐに仲良くなった。不安定な人が多くて運営が大変。トラブルもよくあって、というような話にも一緒一緒、と共感でき嬉しくなった。

 こうしたセルフヘルプグループの支援に特化した機関は全国でも数か所しかなく、その一つである「ひょうごセルフヘルプ支援センター」が近所のその場所にできたのは2000年ごろであった。そんな「偶然」が重なって、私はこの活動を続けることができている。

 その当時、成人の発達障害の理解も支援もほとんどなかったということは、これに関していえばむしろ良かったと思う。たとえばある病気の専門家であっても、その症状や疾患に対する知識はあったとしても、本人主体のセルフヘルプグループについても詳しいわけではない。実際に当事者だけのグループに対して、支援者は概ね否定的だった。確かに活動を始めたころは診断がある人はほとんどおらず、治療も支援もない中で特性がぶつかって揉めることもよくあった。そのせいか大人のグループは人格障害の集まりだといわれることさえあった。逆にグループの活動に肯定的な親や支援者は、むしろ積極的にサポートしてくれようとした。しかし、そのようなグループはあまり長続きしないことがある。支援者が関わることで安全性は高まるが、本人たちが依存的になったり自由が制限されたりすることで、自助活動としての盛り上がりには欠けてしまうのだ。

 ではどうすればよいのか。北米のセルフヘルプグループの指南書には、「1からはじめてはいけません」とある。その言葉通り、生きづらさの違いはあれど、先人たちが積み重ねてきた「体験的知識」から学び、ノウハウを共有することで、揉めたり失敗したりしながらでも安定して活動を続けることができるのである。「関西ほっとサロン」は、それを今も実証し続けている。

 さらに、このような「知識」や「コツ」があるなら是非仲間たちにも知らせたい、この活動をもっともっと広げたいという思いで始めたのが「DDACピアリーダー研修会」である。2006年から何度か名称や内容をアップデートしつつ継続して開催してきた。2011年から2013年には全国8か所で研修会を開催し、これまでに参加した100人以上のピアリーダーが、緩くつながりながら全国で活動を続けている。

 自分がADHDだと気づくまでは、私は自分のような人間は他にはいない、どうせ誰にもわかってもらえないと思っていた。それが仲間に出会い、同じように感じてきた人がいると知って孤独感や孤立状態から抜け出せた。そしてさらに別の生きづらさを抱える人たちのグループの存在を知り、話を聞くことで視野が広がった。確かに私たちはものすごく生きづらいが、世の中には他にもいろんな生きづらさや困難を抱えていきる人たちがおり、発達障害もそんなたくさんの生きづらさ、苦悩の一つなんだということに気づく。すると、それからはより客観的に自分たちの困難はどのようなものか、私たちは社会の中でどのように生きていけばよいのかと考えられるようになっていった。5年、10年と長く続いているグループのリーダーは多かれ少なかれ、このような体験をしているのではないだろうか。

 それぞれの地域での地道な活動が実を結び、昨年には「全国発達障害者連絡会議」が立ち上がった。そろそろ本人主体の自助活動をほどよくサポートする仕組みができてもいい時期かもしれない。

 

5. 社会環境の変化と発達障害/6. おわりに〜私たちからの提言〜<

1.はじめに/2. セルフヘルプグループ(自助グループ)について/3. 発達障害のセルフヘルプグループ
4.セルフヘルプ支援センターと「関西ほっとサロン」の立ち上げ
5. 社会環境の変化と発達障害/6. おわりに〜私たちからの提言〜

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