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学習院大学 学生センター 学生相談室 中野良吾 イラスト すずきはなこ 2.予備校生の悩み予備校生は、表1のような受験生活のなかで様々な悩みを抱える。カウンセリングの申込書に表2に示すような訴えが多くみられる。勉強に関する訴えが多いが、カウンセリングを行っているとその背景には、親子関係、友人関係、異性関係などの問題があることも多い。実際にカウンセリングルームで「受験生だから恋愛関係の相談をしたいとカウンセリング申込書には書けませんでした」とためらいながら言った男子予備校生がいた。予備校生が人に相談をするときには、最初は勉強や受験に関する内容を訴えとして前面に出してくる傾向にある。 悩みの中でも受験生特有の心身疲労状態として「受験生症候群」というものがある。これは、受験生活に入って禁欲的な努力家に変身し、疲れを自覚したがらない受験生に多く見られる傾向があるものである。予備校生がカウンセリングルームに来談したときの訴え方は、「集中困難」、「勉強がはかどらない」というものを中心に、「体がだるい」、「よく眠れない」、「腹部の調子が悪い」、「あまり食欲がない」などの身体的問題や、神経が過敏となり、「人と会うと緊張する」、「不安感が強い」、「何をするのも億劫だ」、「些細なことが気になる」、「イライラする」などの対人緊張、無気力、抑うつ気分をともなっている。このような状態になると集中力がますます低下してしまうのである。
受験生症候群のメカニズムは図1に示す通りである。まず、模試などで思うような成績が取れなかったり、成績が落ちたりすると、不安や焦りが生じて多くの場合に勉強時間を増やそうする。そのために睡眠時間や休憩時間を削って勉強時間に充てるのである。極端な場合は、午後眠くならないようにするために昼食を減らすというように食事を制限する予備校生もみられる。このような生活をしていると当然疲労が蓄積するのであるが、多くの予備校生は疲労を自覚できず、自分が怠けているからだとか、頑張りが足りないと思ってしまい、結果として勉強の能率や集中力が低下する。そして、また成績が落ちるということになり、悪循環が始まってしまうのである。ついには、夜は眠気と戦っているだけで勉強が手につかず、翌日の授業の予習が十分できなくなり、昼間は睡眠不足のため予備校の授業では居眠りをして集中できず、授業後の復習に時間がかかってしまうという状態に陥るのである。
受験生症候群の一般的な対処法、予防法は、@日中にあまり強い眠気がない程度の睡眠時間を確保する。A集中力や能率が落ちてきたら疲労が蓄積して限界に達しているのだと自覚して計画的に気分転換をする。B自分の実力を客観的に評価して、プレッシャーを軽減するために第一志望だけではなく、「すべり止め」「実力相応」の大学も受験するようにする。以上の3つである。また、不安や焦りが非常に強い場合や、不眠がひどい場合には、医療機関への受診を考慮することがある。
1.予備校生のおかれている状況 |
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