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こころの健康シリーズZ 21世紀のメンタルへルス

No.6 SNS使用に伴うコミュニケーション問題

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター インターネット依存治療研究部(TIAR)
橋本琢麿 前園真毅 三原聡子 中山秀紀 北湯口孝 越野仁美 樋口進


1.はじめに

 私は久里浜医療センターで副看護師長をしており、ネット依存治療研究部門(TIAR)の一員として、家族会の運営や患者・家族の教育、予防啓発などに関わっている。当院では2011年にインターネット依存専門外来を開設し、現在も多くの患者や家族が外来や家族会を訪れている。私達がネット依存に苦しむ患者や家族と接する中で感じるのは、近年インターネットやスマートフォン(以下スマホ)の普及により、若者のコミュニケーション手段が大幅に変化しているということだ。多様化したコミュニケーション手段により、翻弄され、現実世界と仮想世界の間で折り合いをつけられず苦しんでいる青少年と、彼らに向き合い困り果てている家族が後を絶たない。


2.SNSとは

 SNS(social networking service)とはインターネット(以下ネット)を通じ、スマホやPCで家族や友人あるいは、見知らぬ第3者と互いの近況や雑談、写真や動画を共有しながら、コミュニケーションを楽しむネット上のサービスである。当院ではFacebook(フェイスブック以下FB)やInstagram(インスタグラム以下インスタ)依存はあまり報告されていない。報告が多いのは、オンラインゲームに関連したSNS使用で、自らのゲームの状況などをつぶやくTwitterや、ゲーム参加を求めるLINEが多い。ゲームをしなくても就学期の青少年にとってスマホとLINEは友達作りや、つながりの必須アイテムとなっている。

 SNSでは基本的に、使用者がユーザーIDと呼ばれる住民票のようなものを作成する。IDの作成はメールアドレスと指定したパスワードが必要である。続けてプロフィールと呼ばれる簡単な自己紹介を作成する。各SNSにより詳細な機能は異なるが、投稿した文書や写真や動画に対して他者がレス(返信)することでコミュニケーションが即座に、あるいは時間差で成立していく。他者のIDを登録することで、友人になったりファンになったりとSNS上での人間関係が拡大していく。現実世界より簡単に人間関係の調整ができ、嫌な相手やトラブルになった相手は、友人関係を解除したり、周囲に悟られないように閲覧拒否(ブロック)することができる。

3.代表的なSNSと特徴

 LINE:主に短文の文字を交換する。2016年の11月時点で日本人の2人に1人が使用しているとされる。スマホ同士でチャットと呼ばれる即時性のあるコミュニケーションをするアプリである。相手が文章を確認すると“既読”という表示で相手が送信した文章を読んだか否かが分かる。元々は震災時の安否確認のような意味合いで既読機能は作られた。しかし相手が文章を読んだのにすぐ返信がないことを「既読スルー」と呼び“すぐに返信しなければならない”という思い込みや既読スルーからいじめの問題に発展することもある。
 電話帳に登録済の電話番号やメールアドレスから自動的に友達リストを作成し使用者に提示する。LINEのIDを交換する掲示板から、出会い系サイトや未成年ナンパなどの問題も出現した。また1対1のスマホ同士のコミュニケーションのみでなく、“グループLINE”と呼ばれる複数(グループ)でのコミュニケーションも行える。例えば学生はクラスや仲良しグループLINEがあり、当然グループでは発言数が多くなるため、自分のスマホに何度もメッセージ通知がある。気がつくと返信しなければならないメッセージが溜まっていく。このことは本人達にも負担である。
 さらにスタンプ機能という、メールの絵文字を発展させたような機能がある。これは怒ったり泣いたりしているキャラクターのイラストを相手に送りその時の気持ちや感情を表出する。文字だけでなく、電話のように音声通話も可能である。また、写真や動画も即座に相手やグループメンバーと共有できる。筆者の学生時代はノートを見せ合うなどアナログな方法だったが、現代の若者はノートの写真をLINEで見せ合う。また友人同士の名刺交換的な意味合いもあり、「LINEがないと友達もできないからスマホを買ってほしい。」という言葉が多くの母親を悩ませている。

 ツイッター:140文字の短文を主に見知らぬ第3者に向けて発信するツール。つぶやくTweetが名前の由来。つぶやきを発信することをTweet(ツイート、もしくはつぶやき)という。スマホやPCで使用・閲覧可能。好きな芸能人やクラスメイトの近況をチェックしたり、趣味やオンラインゲームの状況などをつぶやく。一般の大学生が授業内容をつぶやき、他者と共有している。気になる人のツイートはフォローと言って定期的に自分のスマホに通知が来る。フォロワーという仕組みがあり、フォロワー数(読者)が多いことが人気者の証とされる。オンラインゲームの実力者には多くのフォロワーがつく。つぶやきに対しては、インターネット上の掲示板と同じように返信(レス)ができる。また、リツイートと言って他者のつぶやきを自分が引用することで、ツイートを拡散する。基本的には生身の人間がつぶやくのだが、企業の広報のIDがあったり「ボット」と呼ばれる自動つぶやきプログラムも存在する。当院でもオンラインゲームとツイッターを使用しているという患者や家族の報告が多い。

 Facebook:実名登録が原則のSNS。プロフィールページには交際ステータスなど実名以外の個人的な情報が多く含まれる。登録したメンバーは友人(フレンド)と呼ばれる。公開範囲を“友人まで” や“友人の友人まで” といったように制限できる。投稿した写真や動画には、コメントや返信がつき投稿者や友人がコミュニケーションを行なっていく。「イイね!」と呼ばれる機能があり、相手の投稿に対し“読みましたよ、イイですね” といった意思表示が簡単にできる。

 Instagram(インスタグラム):写真を加工、シェアできる主に写真に特化したSNSである。スマホやPCで利用できる。芸能人や企業のインスタも多い。インスタ映えする写真目的で、ふさわしい旅行先やレストラン、喫茶店などが注目されるようになっている。若い男女が自ら交際中の写真を投稿する使用方法もある。

2.SNS使用による問題とコミュニケーション問題

1.はじめに/SNSとは/代表的なSNSと特徴
2.SNS使用による問題とコミュニケーション問題
3.SNS使用がコミュニケーション、日常生活に及ぼす問題を架空事例から考える
4.SNS問題予防のために/まとめ

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