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学校メンタルヘルスの今後の課題
−シリーズの締めくくりとして−

東京都杉並第四小学校主幹養護教諭 玉置美惠子
帝京大学文学部准教授 元永拓郎
司会 公益財団法人 日本精神衛生会理事 高塚雄介


高塚:最近は教師のメンタルヘルスがすごく悪く、休職者の多くが精神的問題を抱えていると言われる。先生を支える機能というか役割をどうやって作ればいいんですかね。

元永:直接的な答えではないのですが同質であることを求める社会の圧力があります。教育は宿命的にそういう面を持っていると思います。一方でコミュニケーション能力の課題があるかもしれないが、一人ひとり違うということを認めてその子の人生が豊かになるということを目指すようなことを同時にやる。それは子どもにとって大変なことですが日本全体が苦しんでいることだとも思うんです。日本の産業構造が変わって、同質であることで成長してきたのが、グローバリゼーションが言われるようになり、製造業も個性を用いてイノベーションしていかなきゃいけなくなった。ましてやサービス業が実を上げていくには個性が非常に重要になってきた。だから教員だけじゃなく日本で働くすべての人のメンタルヘルスが悪いわけですよね。

高塚:学校そのものが、産業革命の時代からその時々の産業構造を反映させる組織ですね。だから今の時代にこういう人間に育てて欲しいという要求がある以上、学校がそれにある程度応えていくというのは宿命かもしれませんね。しかしその中でいじめや体罰にしても先生のメンタルヘルスにしても歪みがどんどん目立つようになってきた。どこかで歯止めを掛けないといけないと思いますが、そのためには何をしないといけないんでしょうね。

玉置:学校現場で言えば教師はなんでも自分でやらないといけないんです。担任一人がすべてしないといけないような社会は他にはないと思います。授業の準備から生活指導から色んな業務がどんどん膨れ上がっている。授業で勝負しろと言いながらとても一人で出来るような仕事量ではないんです。だから疲労困憊してしまう。もう少し細分化して、先生が授業の研究をしてきちんと授業に入る時間的な余裕とかが持てるシステムを作る。小学校は最たるものです。トイレに行くのもやっとで、休み時間になったら子どもたちのトラブルも見なきゃいけないなど、常に緊張が続き本当に気の毒だと思います。私もその渦中にいるんですがもうちょっと何とかならないかと。人材が必要なのでもっとそこにお金をかけて欲しい。

高塚:もっと人を増やして、役割を分担したり軽減させることが必要だと。

玉置:休暇は殆ど無い。取るように言われますが仕事が次々あるので取れないんです。

高塚:小学校の教員は全教科ですよね。あれは何か意味があるんでしょうか。

玉置:全科ということで小学校の教員は免許が下りていて東京の場合は図工や音楽、学校によっては理科も専科がありますが、地方は音楽も図工もないところもあります。そうすると全部一人でやる。神業ですよね。教えられるわけがないと私は思うんです。

高塚:でもずっと日本の小学校教育はそうでしょう。

玉置:でも今の子どもは塾とかいって専門的な教育を受けていますよね。そんな中で理科も算数も国語も完璧に教えられる教師は絶対いないと思う。そこはもうちょっと国として考えていかなきゃいけないシステムなのかなと思います。

高塚:もうそういう時代に来ていると。

玉置:はい。たとえば運動会で一輪車で校庭に砂を運ぶとか、そういうのも全部教員がやるんです。整地したり環境を整えたりする人がいて、運動会の練習に入るのが当たり前ですが、そういうところも教員がするんです。すべてのものを一から全部する。

 

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