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学校メンタルヘルスの今後の課題
−シリーズの締めくくりとして−

東京都杉並第四小学校主幹養護教諭 玉置美惠子
帝京大学文学部准教授 元永拓郎
司会 公益財団法人 日本精神衛生会理事 高塚雄介


高塚:多くの保護者は教師というのは、特に小学校では全人格を教育する人だと思っている。実際、生活指導から部活動から何でもこなしてくれる教師を求めている。

玉置:それはあるかもしれない。裏の仕事が見えないから「なんで休みの日に来てるんですか」とか「5時に帰るんじゃないんですか」とか仰る父兄は今でもたくさんいます。

高塚:なるほどね。だからまめに通知を出してくれるといい先生だし、遅くまで学校に残っているといい先生で、そういう評価が保護者の間から出てきますよね。

玉置:ちゃんと子どもを見ている先生は確かに評価されると思うんですが、その裏で先生がどれだけ自分の時間を費やしているかまではわからない。だから「休みの日まで学校に来てるんだ」なんてことにもなる。どれだけ仕事があるかまでは見えてないですね。

元永:教育はもちろん教員が中心になってやるべきだが、基本は社会がどう行うのかということだと思うんです。今までは学校の先生に任せていたけれどそれは色んな意味で厳しくなっていく。これからは教員でなくても、ボランティアとか地域のお手伝いとして関わりたいという人が増えてくると思うんです。そこをつなぐのは教員がやらなきゃいけないし、心理的には大変になると思いますが地域で学校が運営されていく方向、そういった開かれた学校を目指していけると思うんです。そこはすごく大事だと思うし、そこで教員の大変さを地域の人が気づくことの意味はあると思います。今は大変だということを自覚しちゃいけないって突き進んでいって、最後にうつになってブレイクダウンする、そういうケースが多いと思います。

高塚:僕はヨーロッパの学校を見る事があるけど、向こうがすごいと思うのはお年寄りの人たち。もう社会の第一線から退いた人たちを学校が受け入れて、放課後の子どもたちの部活みたいなものを指導したり話し相手になったり色んなことをしている。日本のシルバー人材活用というと、草むしりとか壁紙貼りとかで、長年の経験があるんだからもう少し学校がそういうものを活かしてくれるとね、学校も開かれたものになるしその分先生の負担も軽減されていく気がするんですね。日本でも放課後の学童保育とかあるけど、あれは学生あがりのような人がやっていますよね。学生にとっては勉強になるけれど、お年寄りに学童クラブみたいなところの運営を任せてもいいと思います。今、各論から話をして来ましたが、色いろ学校には問題が山積している。それは単に教師が悪いとかではなく、今の社会が抱えている問題がそのまま学校に反映され教師や生徒、あるいは保護者にも影響を与えているということでしょうね。でも時代を担う子どもが健やかに育っていくためには、改善が不可欠だと思うんですがそのためには何が一番大事なんでしょうか。意識改革ですか、それとも政治の改革ですか。

玉置:毎日のことなので学校の中で安心できる人間関係、学校に行けば色んな不安や葛藤が生まれるけど、それでもなお安心できる人間関係があるというところが一番求められている気がします。人でしか解決できない気がするんです。持っているエネルギーを学校への協力者としてのエネルギーに変えていく。お父さんに、たとえばおやじの会とかPTAの役員になっていただく。私はいいエネルギーの転換だと思います。

高塚:それにきちっと向きあうだけの力が先生や学校にないと。最後に、東京都もそうですがスクールカウンセラーが全校に配置されて、それなりの役割が課せられてきている。スクールカウンセラーと一口に言ってもメンタルヘルス的な観点で対応できる人もいれば、そういうことは無関係に自分の守備範囲のことしかやらないスクールカウンセラーも残念ながらいる。教師から見てそういうことにどうあって欲しいという希望はありますか。

玉置:今のシステムでは週一回しか来ない。だから普段の子どもの姿が見えにくい。週一回で本当に相談に結びつくかというとなかなか繋がりにくいんです。力のあるカウンセラー、メンタルケアをしてくれるカウンセラーがいるのが一番望ましいけれど、週一回ではなかなか機能しないというのはあります。

元永:野球で言えば毎日抑えてくれる人がいるとありがたいけど、とりあえず週一回でも来て、それを確実にやってくれるリリーフピッチャーがいれば楽だと思うんです。スクールカウンセラーもそうあるといいと思います。そのためには学校の先生が、生徒も含めてですけど、リリーフが週一回しか来なくて視野は狭いけれどある種の得意球を持っていて、その得意球が
役立つようなコーディネートをする。そういうのがあるとたぶん輝くだろうし、そういう風にして先ほど話のあった開かれた学校になっていく。週一回しか関わらなくてもそうした外部の人といい出会いをする。それが積み重なっていくと・・。

玉置:そうですよね。力大きいですよね。

高塚:わかりました。短い時間でしたけれども学校で起こっている問題を考えていく中でこういう方向が望ましいというものがおぼろげながら見えて来た気もします。これを参考に今後の課題にさせていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

 

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