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No.3 「生きる力」の基盤である
豊かな心を育てる具体的手立てを!

順天堂大学大学院教授 大津一義
イラスト 加藤 都巳


1.豊かな心を育てる具体的手立ての必要性の経緯

近年、子供の健康問題は、いじめ、不登校、薬物乱用、無防備な性行為、暴力、生活習慣病、心の問題、殺傷、自殺など、ますます複雑多様化し深刻化してきている。この子どもの危機的状況に対処するために、1998年に学習指導要領が改訂され、「生きる力」の育成が学校教育の教育方針として掲げられた。10年間の実施を経て、2008年3月に新学習指導要領改訂が改訂されたが、再び「生きる力」の育成が教育方針として掲げられた。生きる力」が継承されたのは、中央教育審議会が1998年度改訂の学習指導要領の実施状況を不断に検証する中で、子供達の基礎学力や規範意識及び体力の低下傾向、人間関係をつくる力が不十分、無気力な子供の増大、コミュニケーションがとれない、睡眠時間や家族とのふれあい時間の不足、朝食の欠食、外遊びの体験が少ない、テレビ・ビデオ・DVDの視聴時間が長いなどの問題点が多く見出され、「生きる力」、即ち、「よりよく問題を解決する能力」、「豊かな人間性(自らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など)」、「たくましく生きるための健康や体力」の育成が必ずしも実現されておらず、その手立てが不十分であることが判明したからである。これを受けて、2008年1月の中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」では、変化の激しいこれからの「知識基盤社会」に対応してゆくには、確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和を重視する「生きる力」を育むことがますます重要になってくるとし、この実現に向けて、不十分だった「生きる力」の理念の共有化や指導の充実を図るなどの具体的手立てを確立していく必要性が指摘されたからである。以下では、「生きる力」の基盤を成している「豊かな心」に着目し、その指導を充実するための具体的手立てについて、健康な学校づくりの推進と心の健康づくり(健康教育と環境整備)の充実強化の面から、筆者らのこれまでの取り組みを交えながら言及することにする。

2.健康な学校づくり(ヘルシースクール)の推進

1.豊かな心を育てる具体的手立ての必要性の経緯
2.健康な学校づくり(ヘルシースクール)の推進
3.心の健康づくり

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