ご挨拶日本精神衛生会とはご入会のご案内資料室本会の主な刊行物リンク集行事予定

No.7 介護者のメンタルヘルス

放送大学客員教授 竹中星郎

1.介護とは生活へのサポート

 介護という言葉が使われるようになったのはこの20年のことです。看護とどう違うのかが国会で議論されたように、当時から言葉の意味するところはそれとなく伝わっていながら、漠然としていました。というよりその問題は今日までうけつがれ、医療や福祉の現場を混乱させている一因でもあります。

介護と看護

 介護と看護はたしかに重複する部分があります。そしてこの両者は専門家ではない家族や身近な人による日常的な生活の営みとも重複しています。たとえば食事や入浴の介助、歩行の手助けなどは介護や看護のプロでなくても誰もがしていますが、では看護や介護の専門性とはなんなのか、その点もあいまいです。

 端的にいうならば介護は障害(をもつ人)へのかかわり、看護は病気(の人)へのかかわりです。介護とは、たとえばマヒで買い物や観劇に出かけられなくなった人を車椅子でサポートすることです。それによって本人の生活はそれまでどおり続けられます。そのためいつまでというゴール設定はありません。

 看護でも治療や処置とならんで、患者さんの生活のサポートが大切な役割ですが、それは病気が接点です。病気がよくなればADL(日常生活行動)も改善するのでサポートはいらなくなります。末期ガンのターミナルケアも看取りというゴール設定があります。

介護

 医療は(とりわけ心筋梗塞のような急性疾患や手術では)患者の生活より病気の治療が優先しますが、介護を生活ととらえると、主人公は高齢者(要介護者)と家族ということになります。生活にかかわるヘルパーは、高齢者と家族のこれまでの生活スタイルや価値観を尊重するのが基本です。介護の専門性とは、自分の生活スタイルや価値観を持ち込んだり押しつけず、生活をサポートする責任を負った関係なのです。近所の人が善意で手助けするのとは違います。価値観が違う、性格があわないと勝手に投げ出したり、雨が降っている、体調が悪いといって休むわけにはいきません。

 ところで介護とは家族のかかわりにもいわれますが、ヘルパーとの違いを明確にする必要があります。家族にとっては介護は仕事ではなく生活の一部であり、配偶者や親子、あるいは義理の親子という日常的な関係ですが、ヘルパーは介護が仕事という非日常的な関係です。したがって家族の介護は、未体験で専門知識がないために未熟さや合理的でない面があるにしても、彼らの生活スタイルを映し出しています。

 そして“介護は家族にとって生活の一部”という意味は、家族が、仕事や社会的な活動、趣味といった自分の世界をもっていることです。介護の社会化によって、このような家族の生活をささえることが課題ですが、家族の思いや考え方、それまでのやり方、そして家族関係などはそれぞれ違います。

 これまで記したことをふまえて、まずヘルパーとして介護している家族にどうかかわるか、次に家族自身のメンタルヘルスについて考えてみます。


2.家族へのサポート:ヘルパーの役割

1.介護とは生活へのサポート
2.家族へのサポート:ヘルパーの役割
3.家族のメンタルヘルスのために
4.おわりに

ご挨拶 | 日本精神衛生会とは | ご入会の案内 | 資料室 | 本会の主な刊行物 | リンク集 | 行事予定