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No.5 子育てとメンタルヘルス

華頂短期大学 斧出節子


子どもと離れることの大切さ

 それでは、日本における子育てはどのように変わっていけば良いのでしょうか。 そのヒントになると思われる研究を紹介しましょう。 それは、子どもと離れる時間と母親の育児不安の関係をみたものです。2001-2年に行われた「育児をめぐるジェンダー関係とネットワークに関する実証研究」(研究代表者木脇奈智子)という筆者も参加した研究プロジェクトで、1歳半もしくは3歳の子どもがいる母親を対象に、子育て状況について調査をしました。 その結果、子どもと離れる時間が短い母親ほど、育児不安が強い傾向がみられました。 また、子どもと離れる時間の短い母親は、夫の家事分担割合が低く、母親が遊びやリフレッシュのために出かけるためのサポートネットワークを持たないという特徴がありました(中谷奈津子「母親が子どもから離れる時間とその関連要因」上述の科学研究費補助金研究成果報告書、2003)。 さらに驚くことに、仕事をもたない専業母親の3割は毎日子どもと離れる時間を全く持たないというのです。 これらのことから、専業母親の母子密室で行われる育児がどれほど大変なものかを理解することができます。

 厚生労働省の調査(「出生前後の就業変化に関する統計」平成15年度 人口動態特殊報告)でも、特に専業母親の子育て負担感がよくあらわれています。 母親の出産前から出産後の就労パターン別に子育ての状況をみたものですが、「子育てによる身体の疲れが大きい」とか、「目が離せないので気が休まらない」といった意識は、ずっと無職できた母親に多くなっていました。 それに対して、仕事をもつ母親は、親族や保育園などとのネットワークを多く持ち、そのような意識を持つ人は少ないという傾向がみられました。 「子育て」と「働く」ということを両立させるのは今の日本では非常に難しい状況にありますが、どうも「働く」ことが子どもと離れる時間を確保することにつながっているようです。

子育てをする人のメンタルヘルスのために

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