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こころの健康シリーズ] 成人の発達障害とメンタルヘルス

No.4 障害像の広がりとビジネス視点による就労支援の再定義
〜法定雇用率2.7%時代におけるパラダイムシフト〜

株式会社Kaien 代表取締役 鈴木慶太


2.マクロ環境の変化:福祉から「人的資本経営」へ

 かつて障害者雇用は、企業の社会的責任(CSR)やチャリティ、あるいは「コンプライアンスのためのコスト」という文脈で語られてきました。しかし、そのフェーズは終了し、現在は「経済合理性」が支配するフェーズに入っています。

 背景にあるのは、シンプルかつ強力な数字の力です。厚生労働省は、障害者の法定雇用率を段階的に引き上げ、2024年4月に2.5%、そして2026年7月には2.7%とすることを決定しました(厚生労働省,2023)。これにより、従業員数37.5人以上の企業には障害者の雇用義務が生じる計算となります。

 一方で、日本の生産年齢人口は減少の一途をたどっています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、生産年齢人口は2020年の約7,500万人から2070年には約4,500万人へと激減すると予測されています(国立社会保障・人口問題研究所,2023)。現場の人手不足は深刻を極めており、特に物流、小売り、介護、ITの下流工程などでは、事業の継続すら危ぶまれる状況にあります。

 企業の本音は、「社会貢献のために障害者を雇う」余裕などなく、「戦力として計算できるなら、障害の有無に関わらず喉から手が出るほど欲しい」という状況に追い込まれています。これが、現代の労働市場のリアルです。

 これまで企業が法定雇用率を満たすために好んで採用していたのは、身体障害者でした。しかし、その層の採用は既に限界に達し、奪い合いになっています。企業が雇用率を達成するためには、精神障害・発達障害の人材を採用せざるを得ません。

 ここで起きている変化は、「かわいそうだから雇う(保護的雇用)」から「特性を活かして成果を出してもらう(戦力化)」へのシフトです。近年、「人的資本経営」の流れの中で、投資家は企業の多様性(ダイバーシティ)を厳しくチェックしています。「異質な人材をどう活かしているか」が、企業の評価指標となっているのです。支援の現場においても、「守る」だけでなく「いかに企業の戦力として送り出すか」という視点が、これまで以上に重要になっています。

 

3.潜在する「18%」:障害像の広がりと福祉の課題

1.はじめに:ビジネスの視点から福祉・医療を再考する必然性
2.マクロ環境の変化:福祉から「人的資本経営」へ
3.潜在する「18%」:障害像の広がりと福祉の課題
4.現場の技術論:「症状」をビジネス共通言語へ翻訳する
5.構造的変革への適応:職場の再定義/6.おわりに:専門性の「点」をつなぐ

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