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株式会社Kaien 代表取締役 鈴木慶太 3.潜在する「18%」:障害像の広がりと福祉の課題マクロ環境の変化に伴い、支援対象となる「障害者」の定義や実像もまた、大きな広がりを見せています。 浜松医科大学の土屋賢治特任教授らの研究グループによる大規模な出生コホート調査は注目に値します。同研究では、3歳児を対象に実施されたデータを解析した結果、発達障害の診断を受けている、あるいはその特性(懸念)があるとされる子どもの割合が、約18%に達するという推計を示したのです(Nakagomietal.,2022)。 およそ5人に1人が、何らかの神経発達症的特性(ニューロマイノリティ性)を抱えながら成長し、社会に出る時代が到来しているとも読み解けましょう。これは、将来的に就労支援や社会的配慮を必要とする層が、従来の想定を遥かに超える規模で潜在していることを示唆しています。 支援ニーズが急増する一方で、その受け皿となる福祉サービスには制度疲労が生じています。特に顕著なのが「就労継続支援B型(以下、B型)」の急増と機能の曖昧さです。 一般就労が困難、あるいは離職した精神・発達障害者の受け皿として、B型のニーズは高まり続けていますが、厚生労働省のデータによれば、B型から一般就労への移行率は年間数%程度に留まっています(厚生労働省,2022)。 私はB型の持つ「生活基盤の維持」「居場所」としての機能を否定するものではありません。しかし、ここにはある種の「福祉のトラップ(罠)」が存在します。障害基礎年金と工賃で生活が安定すると、そこから抜け出し、リスクを負って一般就労に挑戦するインセンティブが働きにくくなるからです。 特に問題なのは、潜在能力が高いにもかかわらず、適切なマッチング機会を逸してB型事業所に滞留している「高機能層」の存在です。有名大学を卒業し、高い能力を持ちながら、就職活動でのつまずきにより自信を喪失し、B型で単純作業に従事しているケースは枚挙に暇がありません。これは本人にとっても、労働力不足に悩む社会にとっても巨大な損失です。 この課題に対応するため、2025年10月より新制度「就労選択支援」が開始されました。これは、就労系福祉サービスを利用する前に、第三者機関が本人の「働く能力」や「必要な配慮」を客観的にアセスメントし、適切な進路を選択できるよう支援する仕組みです(厚生労働省社会・援護局,2023)。 これまでは「不安だから」という主観的な理由で福祉的就労が選択されるケースがありましたが、今後は客観的なアセスメントに基づき、能力がある層は積極的に一般就労や就労移行支援へと誘導されることになります。この「機能分化」こそが、多様化する障害像に対応する鍵となります。
1.はじめに:ビジネスの視点から福祉・医療を再考する必然性 |
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