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No.9 職場復帰支援をめぐる昨今の動向と対策

京都文教大学・神田東クリニック島 悟
イラスト 内藤あゆみ


3.職場復帰支援が注目されている状況について

(1)ビジネス界からの参入
昨今、健康・医療・福祉・介護領域は数少ない成長産業とみられています。ビジネス界では、虎視眈々とビジネスチャンスを狙っていると言っても過言でないと思います。職場復帰支援を一件当たり幾らで請け負いますという「業者」が出現したことに象徴されています。本来的に健康問題を扱う領域であり、高度な知識・技術・経験を要する分野であり、人の生命に関わる領域です。休業中や職場復帰早期に自殺企図する方は決して少なくありません。心の病を経験したことにより、心が弱っているとともに、休業中は、そして復職においては、さらにストレスを受けることは容易に想像できます。組織として、放漫経営による事業破綻は論外であり、よい意味でのビジネス感覚は必要ですが、収益性が前面に出ることは好ましくないと思われます。メンタルヘルス領域は、医療と関わる難しい領域であるにも関わらず、参入障壁が低いと見られているのは困ったことです。

(2)医療界からの参入
職場復帰支援は地域保健と産業保健が出会う領域です。このため、医療界からの参入は基本的には望ましいことであると考えています。但し、そのためには前提条件をクリアーする必要があります。それは、産業保健に関する理解です。法制度や労働者が働いている場、あるいは環境に関する理解です。実際に、労働者が働いている現場のイメージが描けるかどうかということです。

従来から行われている統合失調症を中心とした就労支援とうつ病を中心とする復職支援では、同じ支援という用語を用いるものの、その方法は全く異なってきます。したがって、統合失調症を対象とした従来型のデイケアを「復職支援」を行うデイケアに転用するのでは十分な成果が得られない可能性が高いと考えられます。

また、本来的に、復職支援は「精神科リハビリテーション」と「職業リハビリテーション」の流れを適切に踏まえて、事業場における労働者(および周囲の者)の支援も含む包括的なものであるべきであると考えています。

4.終わりに

1.はじめに
2.「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」改訂について
3.職場復帰支援が注目されている状況について
4.終わりに

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