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東京都教育相談センター 今村泰洋 イラスト フジヒロ ミト 3.家族を頼りにする思春期の子供たち下 のグラフは「家族親和感」因子の得点分布を示したものである。15点満点で全体平均は9.1点であった。この因子は「つらいとき、はげましてくれる家族が いる」「大事なことは家族と相談して決める」等の5項目から構成されており、家族の中で支えられ、安定・安心していられるかどうかをとらえている。虐待な ど親子関係が問題とされる昨今、このような結果になったことは喜ばしいことと思える。 し かし、喜んでばかりいられるのだろうか。思春期は、子供から大人に変わっていこうとする時期である。その際には親の庇護の元から離れ、自分なりの考えで自 らの足で歩み出すことをしなければならない。これまでのように親を頼ってばかりはいられない。そう考えると、この結果を、思春期になっても安全地帯である 親の元を離れられない子供たちが意外と多い、と考えることもできるのではないだろうか。 相談を受けていると、子供のことが分からないという親御さんが多い。子供が一人の人間として親から独立していこうとしているのだから、これまでのように何でも分かるという わけにはいかないのだが、分かるのが当たり前と思っている親御さんが多い。しかし、子供がいつまでも自分の手のひらの上で動いていると思うのは間違いであ る。危なっかしいと思っても手を放してみること、親を頼りにするのではなく、自分で考え自分で決断すること、親は時には突き放さなくてはならない。それは 大変勇気のいることである。頭では分かっても現実の子供を見ると手を放す勇気が出ない。子供を信用できないといってもいいかもしれない。また、子供の方は といえば、もちろん最初からうまくできるわけではないから、親の気持ちを逆なでするような行動をとったりする。「なんでわかってくれないんだ」と時にエス カレートしていくその姿は、まるで赤子に戻って駄々をこねているように見えることすらある。その結果、いつまでたっても親から自立できず、子供から目を離 せないという依存と保護の関係から抜け出せなくなってしまった親子を何組も見てきた。言葉を変えると“あきらめきれない親子”とでもいうのだろうか。暴言 かもしれないが、子供が大人になっていくためには、親を頼りにすることをあきらめる必要があるし、子供はいつまでも自分の手の内にいるという幻想はあきら めなくてはならないと思うのである。子供のことばかりを見ているようになってしまった親は、物理的に子供を見ないで済むように外に出ることも有効だろう し、親に理解してもらいたいと願っても苦しさだけが募るのであれば、親に理解してもらうことはあきらめ、自分で自分の道を歩み出すことも必要であろう。親 子共に決してすぐにあきらめられるものではないが、それが叶うように寄り添い支えるのが私たちの役目でもあると考えている。言ってみれば、思春期に入った 親子に対して精神的な親離れ子離れのお手伝いをしているのだといえる。それだけ、現代は自立が難しくなってきているといえるのではないかと思う。
1.はじめに |
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