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法律家から見た最近の学校と子ども

弁護士(日野市民法律事務所) 木村真実

イラスト 友花


はじめに

精神科や精神科領域のコメディカルの方々には、医療観察法をはじめとした刑事事件の関連、あるいは少年事件をはじめとした子どもの事件の関連でたいへんお世話になっている。このような機会をいただいたので、一弁護士として、また子どもを学校に通わせている親として、感じていることを書かせていただきたいと思う。

非行事件といじめ

弁護士の仕事のひとつに、少年事件の付添人というものがある。犯罪を犯した未成年である非行少年に寄り添いながら、家庭裁判所での少年審判に向け、非行事実のチェックをしたり、更生のための環境調整をしたりするものである。少年事件には共犯事件も多く、暴走族の仲間何人もで殴る蹴るをしたという傷害事件などがある。どうしてやったのかを聞くと、やらないとグループの力の強い者(少年らにとって1学年の差は大きいし、喧嘩の強さなどはシビアに観察されている)にやられる、グループからはじかれる、などと言う。グループにはグループ独自の規範(集会には絶対に来なければならない、服装はこうでなければいけない、グループを自由に抜けることは許されないなど)があり、少年らにとってその規範を守らなければ、自分がやられる。

また、少年らは被害者の落ち度を口にすることも多い。あいつが生意気だったから、あいつがルールを破ったから、などである。グループの規範を守ってその規範からすると非を語る(あいつが○○したからしょうがない)こと、被害者の痛みをきちんと感じられていないことが多いことも非行事件と類似する。いじめを受けた子どもの代理人としていじめた子どもと話をすると、その「悪いことをした」意識の乏しさにびっくりする。それは、「自分が」傷つけた意識がないからであり(他の子もやっている)、「大きなこと」をやっている意識がないからであり(ナイフで刺したわけではない)、「深く」傷つけた意識がないからである(あいつだって笑っていたじゃないか)。

私は、いじめが犯罪であるということを確認しておくことは必要だと思うが、いじめのなかのある行為だけを切り取って処罰することは、いじめの本質から離れてしまうと思う。また、現場が学校であるのに、警察など学校の外の機関の処理に委ねてしまうのには躊躇がある。ただ、少年事件について日々投入されている捜査機関、少年鑑別所、家庭裁判所、少年院などの資源の量と質を考えると、いじめに関してももっともっと資源が投入される必要があると思う。

 

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