弁護士(日野市民法律事務所) 木村真実
イラスト 友花
5 子どもの虐待と学校
子どもの虐待との関係でも、教師に時間がないことは大きな問題だと思う。
学校は、虐待を発見すれば児童相談所に通告する義務があり、児童相談所も学校からの情報を大切に思っている。子どもの傷痣の様子、宿題をやってくるか、着ている服はどうか、食事はきちんととっている様子か、保護者の言動はどうか、など日常接している学校からの情報は、虐待の有無や程度の判断を大きく左右する。
しかし、子どもと接する時間が少ない教師に、子どもの家庭の状況を想像する余裕はない。子どもは自分の家族のことを話せるだろうか。
私の子どもが学校に入って少し驚いたのは、私が小学生のころは毎年あった家庭訪問がないことだった。担任の先生との面談も夏休み中に15分だった。15分では、学校の先生が子どもの様子を話してくださると、親から話す時間さえほとんど残らない。あれでは家庭の状況はわからなくて当然である。
教師に時間を与えて欲しい。そして、いじめの時と同様、担任している子どもが虐待されている可能性について考え、相談が来たら真剣に受け止めてほしい。相談が来る教師がたくさんになって欲しいし、教師以外の受け止め手も大切にしてほしい。
加えて、学校には、虐待を受けた子どもの先々にまで関心を持っていただきたい。虐待を受けた子どもは、心に深い傷を負っていることが多い。しかしながら、児童相談所の一時保護所も養護施設も、虐待を受けた子どもたちに十全な居場所を提供できているとは言い難い。養育家庭など家庭的養護はなかなか進んでいない。施設から通っている子どもたちには、特に理解と配慮をお願いしたい。

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