毎日新聞論説委員 山路憲夫
公的介護保険が2000年4月から始まり、まもなく3年が経ちます。
高齢化が進むとともに寝たきりや痴呆、さらに寝たきり一歩手前の、一人では生活できない、介護や支援が必要な高齢者も増え続けています。
「介護地獄」ともいわれる現実がますます深刻になってきました。家族だけでは支えきれない高齢者の介護を、保険という形でみんなが金を出し合い、介護サービスも民間参入により増やし、社会全体で支えようという「介護の社会化」を具体化したものが、公的介護保険です。サービスの量は、それまでに比べ大幅に増えました。介護保険への理解も深まり利用者も増えてきました。
しかし、サービスの質はまだまだ不十分です。所得が低い人たちへの支援も十分とは言えません。サービス提供事業者への料金(介護報酬)が2003年度から改定され、保険料も変わります。手直ししなければならない制度の欠陥や問題点が、この3年間で浮き彫りにされました。
その課題を考えてみましょう。

1.世界一の高齢国へ
日本の男性の平均寿命は78.07歳、女性は84.93歳(2001年)。日本は世界一の長寿国となりました。
欧米先進国も程度の差はあれ、高齢化が進んでいますが、日本の高齢化の店舗はそれらの国に比べ、あまりにも早いといえます。
国連で定義する高齢化社会(全人口のうち65歳以上の高齢者が占める割合が7%以上)となったのが1970年。それから、わずか24年の間に高齢社会(65歳以上が人口に占める割合が14%以上)に達しました。高齢化率が7%から14%になるのに要した年数はフランス114年、スウェーデン82年、ドイツ42年、いかに日本の高齢化のテンポが早いか、この比較が示しています。しかも、これから日本は高齢化がピークとなる21世紀中頃まで、65歳以上の高齢者は毎年60万から70万人増え続けます。
現在、高齢者は5人に1人弱ですが、2020年過ぎには4人に1人、ピーク時には、3人に1人まで増えます。それに伴い、寝たきりや痴呆など、なんらかの介護(要支援を含む)を必要とする高齢者は1993年には約200万人といわれていたのですが、介護保険がスタートした2000年には280万人になり2025年には520万人、2050年には580万人にも増える、と見込まれています。
2.介護力の低下と福祉行政の立ち遅れ
1.世界一の高齢国へ
2.介護力の低下と福祉行政の立ち遅れ
3.税から保険への転換
4.介護保険で何が変わったか
5.施設から在宅介護サービスの強化を
6.社会的入院の解消を