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No.8 介護保険の現状と問題点

毎日新聞論説委員 山路憲夫

6.社会的入院の解消を

 高齢者の社会的入院(必要ないのに行き場がないために病院に入院する)の解消も大きな課題でした。家族だけでは介護をまかないきれないために特別養護老人ホームに入れようとしても、施設の絶対数が不足しているので、なかなか入れない状況です。やむなく病院に長期入院させる「社会的入院」が増え、福祉の貧困さを病院がカバーしてきたのは事実ですが「社会的入院」の増加は医療費を増やす大きな原因にもなってきました。

 介護保険はそうしたふくらみ続ける老人医療費を抑制することを目的に、1982年に創設された老人保険制度から介護保険でカバーできる費用と給付を切り離す、というやり方をとりました。

 ところが、スタート時に医療から、介護保険対象の介護療養型病床群や老人保健施設などに移ると見込んでいた目標数17万人が、ふたを開けてみると、11万7000人にとどまりました。

 出来高払い制による診療報酬体系は上限抑制が効きにくいといった点で現行の医療保険制度は、無駄を生み出す構造を依然抱えています。介護保険制度は、上限を定めたガラス張りの介護報酬体系になっているために、逆に医療側に介護保険への参入を踏みとどまらせた面もあります。

 医療と介護はもともと境目が分けにくいところもあります。しかし、介護保険により、ある程度、その境目が整理されたのは大きな前進といえましょう。

 しかし、まだまだ不十分です。医療制度の抜本改革をより進め、長期の慢性期の高齢者は介護へ移すというような役割分担を明確にさせる必要がいっそう生まれています。そのためには、介護保険を作った原点に立ち返って、在宅を中心とした「受け皿」を作る必要があります。

 介護保険の原点は自立支援です。そのためのサービスの見直し、強化をいっそう進めていかねばなりません。


 

1.世界一の高齢国へ
2.介護力の低下と福祉行政の立ち遅れ
3.税から保険への転換
4.介護保険で何が変わったか
5.施設から在宅介護サービスの強化を
6.社会的入院の解消を

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