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毎日新聞論説委員 山路憲夫 2.介護力の低下と福祉行政の立ち遅れ介護保険という形で「介護の社会化」が必要となってきたのは、家庭での「介護力」の低下です。高度成長以降、農業などの自営業者が減り、サラリーマン化が進むにつれ、農村などでの大家族が崩れ、核家族化に向かってきた結果、日本の社会の中での家族の「介護力」も衰えてきました。 寝たきりの高齢者のうち、3年以上寝たきりの人は半数強を占め、家庭での介護にあたる9割以上は女性、しかも介護する人の半数は60歳以上でした。 かつて連合(日本労働組合総連合会)が実施した「介護の実態調査」で、介護者の3人に1人が「要介護者に憎しみを感じたことがある」、2人に1人が「虐待の経験がある」と回答しました。家庭介護の現場は、もう限界に来ていたのです。 日本の福祉行政も立ち遅れたのは明らかです。もともとGDPの中で社会保障費が占める割合は欧米に比べ低いのですが、1993年度での国際比較をみると、GDPのうち社会保障費が占める割合は、日本が11.9%に対し、アメリカ15%、スウェーデン38.5%、フランス27.9%、ドイツ25.3%(99年度厚生白書)です。 そのうえに、社会保障の中で、福祉費は抑えられてきました。社会保障給付費の内訳をみると、年金が5、医療が4、介護福祉が1の割合です。 高齢者福祉の整備を計画的に進めていこうと、「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(通称・ゴールドプラン)が始まったのは、ようやく1990年のことです。
1.世界一の高齢国へ |
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