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No.8 介護保険の現状と問題点

毎日新聞論説委員 山路憲夫

5.施設から在宅介護サービスの強化を

 一つは、施設へのニーズが依然高いことです。介護保険は「自立支援」とともに、在宅での介護推進を最大の柱としました。地域での自立支援というノーマライゼーションの考えに基づくものです。
 施設に偏ると、介護費用が嵩み、保険料にはね返ってきます。これまでの施設は集団処遇型で、個人の自立を尊重したケアという点で、問題もありました。

 しかし、介護保険で認められた施設(特養、老人保健施設、療養型病床群)はホテルコストがかからず、すべて面倒をみてくれるという意味で、全国での入所待ちは相当な数に上ります。

 こうしたニーズに対応しようとすれば、保険料は高くなる一方ですし、自立支援というケアが十分にできるかどうかという高齢者本人にとっての問題もあります。

 在宅サービスをきちんと提供できる体制を作れば、施設へのニーズは減ります。

 そのためには、現在の在宅介護サービスのあり方も通所リハビリテーションをきちんとできる専門職を配置するなどの体制強化はまだまだ必要です。

 在宅でも家事援助中心のサービスだけでなく、自立支援できる身体介護の強化も必要になります。そこで問題となるのはケア・マネージャーのあり方です。

 介護保険は介護が医療から自立し、生活できるためのいくつかの新しい仕組みを作りました。

 6ランクに分ける要介護認定がまずその一つであり、もう一つは要介護者本人に応じたサービスをどのように提供するか、というケアプラン作りです。そのプラン作りを担うのはケア・マネージャー(介護支援専門員)という介護保険で新たに作られた専門職でした。

 ところが実態をみると、ケアプランの約半数はサービスの種類が1種類だけです。ケア・マネージャーは医師や看護師、理学療法士、歯科衛生士といった専門職もケア・マネージャーになりましたが、介護のケアをしたことがない人たちもいました。

 ケア・マネージャーは本来、介護者本人にとって最善のケアプランを作らねばならないという意味で、中立性を要求されますが、実際には介護サービスを提供する事業者に属するケースがほとんどで、こうした中立的な立場からサービスが組み立てられ、提供されているかという疑問もあります。

 ケア・マネージャーに対する研修を強化させ、きちんとしたアセスメントとケアプラン作りができるケア・マネを養成することは急務でしょう。

 さらに訪問介護の質を向上させるためにはヘルパーそのものの質を向上させることも欠かせません。
 痴呆高齢者に対する要介護認定のあり方も問題です。要介護認定の一次判定の際に用いるコンピュータソフトで、痴呆高齢者の要介護度が低く出るケースが数多く報告されました。ソフトの問題として、全市町村でモデル事業を実施、来年4月からソフトを改善することになったのは前進でしょう。

6.社会的入院の解消を

1.世界一の高齢国へ
2.介護力の低下と福祉行政の立ち遅れ
3.税から保険への転換
4.介護保険で何が変わったか
5.施設から在宅介護サービスの強化を
6.社会的入院の解消を

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