東京女子医科大学附属女性生涯健康センター 加茂登志子
イラスト 小林恵理子
3)ハラスメントによって生じる心身の不調
イルゴイエンヌは、モラル・ハラスメントが始まったばかりでまだ相手の攻撃に反撃したり、事態を解決できる可能性があるとき、被害者の心身に現れる症状はストレスを受けた時の反応に似ていると指摘している5。まずは、イライラや倦怠感、不眠、頭痛、食欲不振、腰痛などの機能障害が生じるが、一般的なストレス反応と異なるのは、無力感や屈辱感、そしてこれは正常なことではないという違和感がつきまとうことであるという。さらにハラスメントが続く状況では、被害者は抑うつ状態に陥る。また、頭痛や下痢など心身症症状が出現したもの、なかには外傷後ストレス障害(PTSD)と診断がつくような症状を呈する被害者も認められた。体験の内容や程度がPTSD診断に適切かどうかといった診断上の議論も必要だが、症状学的に観察すれば、筆者もまたフラッシュバックに代表される侵入症状、不眠、音に対する敏感さなどの過覚醒症状、あるいは感情麻痺などのPTSDの3大症状を呈する精神的暴力の被害者例を複数経験している。
4)職場のハラスメントが激増する背景と女性という存在
1)増えるハラスメント相談
2)職場におけるハラスメントの種類と定義
3)ハラスメントによって生じる心身の不調
4)職場のハラスメントが激増する背景と女性という存在
5)加害行為はなぜ繰り返されるのか
6)職場のハラスメントに対する対策と問題点