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東京女子医科大学附属女性生涯健康センター 加茂登志子 4)職場のハラスメントが激増する背景と女性という存在ハラスメントを起こす加害者はしばしばその行為を繰り返す。暴力行為は精神的暴力を含め、それが公共の場(開かれた場)で行われた場合は原則として刑罰に問われる。しかし、家庭、学校、職場などある閉じたシステムを持つ小集団において暴力は内向しやすく、外に現れにくい。その集団がより閉鎖的で、特定の「伝統」や「信念」を重視し、またパワーを重視し、パワーの不均衡が著明であり、タテ関係への依存が大きい時に暴力は生じやすいと言えよう。加害者の多くは職場集団の中で上の立場にあるか成果を上げており、一見役に立っているかに見える。加害行為が繰り返されるのは、結局はその行為をその集団が容認する雰囲気があるからである。 戦後、いったん確立した男性中心主義の労働環境に女性が進出していくことで様々な軋轢が起こったことは論をまたない。職場におけるマイノリティとしての女性に対する差別は、セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントにつながりやすいことは明白であろう。 もし女性側の要因を考えるとすれば、個人的資質に帰する論議の前に、女性の長所として挙げられることが多い関係性の重視が挙げられるように思う。セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、またその類似概念として周辺に存在するハラスメントは互いに重なり合っており、共通の特徴が認められる。一番の特徴はこれらのハラスメントがなによりも関係性の暴力であること、そしてその関係性における力関係の勾配によって誘発されやすいことであろう。女性は男性に比べ、他者との関係性やコミュニケーションから自分の社会的な立場・存在を確認し、成熟させていく面がある6といわれている。これらの関係性に関連する職場のハラスメントは女性のそういった「良い面」での特徴をことさらに脅かすストレスであり、信念や価値感をも大きく揺るがすトラウマをも形成する可能性があるといっても過言ではないだろう。 1)増えるハラスメント相談 |
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