![]() |
|||||||
すてっぷ産業医事務所所長 長井聡里 3.女性らしさのメンタル不調さて、素因による精神疾患の性差は精神科医ではないのでこの項では扱いませんが、やはり女性労働者のメンタル不調には、生物学的性差として月経周期にまつわる精神症状と社会文化的性差によるストレス性の精神症状とを、大きく分けて整理しておかねばならないでしょう。 生物学的性差の例として、女性は不定愁訴に代表されるように、明らかな疾患がなくても女性ホルモンの影響から健康状態を気にかけやすい傾向にあり、男性よりも健康志向も強く健康づくりに余念がないとも言われます。月経困難や月経前症候群あるいは更年期障害などに伴う精神症状(イライラ、不安、落ち込みなど)は、仕事に支障のないレベルであれば生理的現象として自己管理しておけばよいのですが、実際はその軽重の判断は客観的指標に乏しく、また月経は日常的な出来事であるため、一人で抱えこんで悩んでしまい仕事のパフォーマンスを発揮できないでいるケースがあります。産業医の多くは産婦人科経験がありませんので、その背景にうまくアプローチしづらく、また女性労働者も男性上司への相談をためらったり、産婦人科受診に対しては他科以上に抵抗感を持っていたりします。そのため職場不適応や精神疾患として対応してしまうとますます問題のありかを見失いかねず、本人も職場も混乱してしまいます。婦人科専門スタッフで対応することが難しいとしても、女性労働者のパフォーマンス低下の背景にはそのような状況にうまく対処できていないこともあると理解してやり、健康相談に出向かせるなどの配慮が職場でできれば、彼女らも安心して働けることになります。 一方で社会文化的性差については、男性中心の企業組織風土において女性らしさを意識するもしないも働きづらさがあるということを女性たちはキャリアの見通しの中で、ある程度の諦めと寛容とによって状況を理解し適応しています。そのためか、女性は会社に依存せず、社外に趣味や友人とのおしゃべりなどストレス解消の場を持つのが上手で、多くはメンタルヘルスの自己管理を無意識にもやってのけている人が多いように感じます。がしかし、ひとたびその気づきが大きく揺さぶられると、さまざまなストレス症状を呈し始めます。また、そもそも女性の場合、正社員の待遇が得られている人は社会全体からすれば少なく、派遣やパートなど有期契約という身分の不安定さの中で、メンタル不調を生じれば就労継続自体が困難となって、肝心の問題点が企業内ストレス対策の土壌にさえ上ってこないともいえます。 1.はじめに |
|||||||
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |