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No.12 働く女性のメンタルヘルスと
21世紀の労働のあり方

すてっぷ産業医事務所所長 長井聡里
イラスト 堀中 文子


5.保護される立場から多様性における「差の価値の創出」へ

性差別のない社会、職場環境の実現はもちろん望まれていることですが、ともすると男女平等の名のもとに女性を「男性並み」に合わせる、仕立て上げることに周囲も本人も躍起になってしまいがちです。それは男性と同等になれることかもしれませんが、決して幸せな男女平等とは言えない部分が数多く残ります。冒頭にも述べたように、医学的には性差は歴然と存在し、それはどちらがどちらに劣るとかといった優劣の問題ではなく、人間が自然淘汰の中で生き残るために培ってきた性差であり、健康管理上も両性が両性の特性を発揮できる職場環境づくりこそが大切となってきます。「男性が外で働き、女性が家庭に」という仕組みもある時代には必要な適応手段だったのだろうと思います。その意味で男性たちが築いたと自負しせっかく機能させてきた社会に、女性たちをその枠内に適応させたい気持ちもわかります。しかし、それでもうまくいかない状況が生じてきたからこそ、現代においてこの問題に向き合わねばならなくなったわけです。女性が少数派であっても様々な雇用分野に進出して活躍し、女性の視点でこれまで気づくことのできなかった問題点を抽出し解決策を講じてくれることを、同性たちは皆、期待しています。女性専用車両がかえって差別となるのであれば男性専用車両も必要でしょう。障がい者に優しい車両も必要なわけですから。

生存競争にはその生物の多様性が広がるほど有利であると言われます。もしかすると自然界において、実は、“人類”はその生存の危機に直面しているのかもしれません。だからこそ、働き方においても生きざまにおいても、多様性が求められる時代が到来していると考えたくもなります。多様性は「差の価値の創出」でもあります。職場において女性は、健常な青壮年男性に対して保護されるべき存在ということではありません。多様性における異質さが認められやすい職場環境づくりこそが、メンタルヘルス対策の解決の早道となってくるのかもしれません。

 

 

6.終わりに

1.はじめに
2.女性にとって働きやすい職場とは
3.女性らしさのメンタル不調
4.働く女性のストレスあれこれ
5.保護される立場から多様性における「差の価値の創出」へ
6.終わりに

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