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No.9 高齢者のこころの問題と暮らし −家族の悩みについての相談(医療・支援など)−
元 都立中部総合性新保険福祉センター 長尾佳子
高齢者精神医療相談担当 精神科医師

1.はじめに

 長寿の達成で、お年寄りは長い余生を送るようになりました。しかし高齢者の心身の状態はさまざまで、必ずしもすべてのひとびとが健やかに老いるとはかぎりません。年をとると、心身に何ほどかは不調が起こり易くなり、日々の生活が妨げられることも少なくありません。その上、不調は青、壮年期のように容易には回復せず、更に不具合を招くことも稀ならずあります。

 緊急の事態は、もとより周囲の素早い判断で対応され、身体的な苦痛や不自由があれば、本人から何らかの愁訴や要求があって、対応が可能な場合が多いと思われますが、これに反してお年寄り自身に、状態や言動の異常性に自覚や認識がない、介入することに抵抗がある、あるいは、問題として取り上げられる機会がないままに見過ごされてしまうような場合もないとは言えません。このことは、特に精神科領域の問題としていわゆる「知」「情」「意」の面で変化という姿でしばしば見うけられます。

(1)知的な働きの衰えが起こると

 もの忘れや、理解力の低下、誤解や誤認、言動や対応の異常性などで周囲に気付かれ、おそかれ早かれ、日常生活のさまざまな行動の不適切さや失敗となって表面化します。また、身辺の出来ごとの謝った判断や解釈で人間関係を損なう事態にも至ります。生活行動の障害が大きくなると身体や生活環境の安全性もおびやかされます。生活上の不都合がいろいろ起こるため、お年寄り自身も不安を感じ易くなります。しかしそういう困った状況や不安な気持を、とかく周囲に悟られまいとする態度をとりやすいため、接触の少ない人たちからは問題が見えにくいことが多いのです。

 その場その場の対応に、これまでとあまり変りがなくても「生活」に少しでも支障が生じていると気付かれる場合は、できる限り接触を増やして、昼夜の生活に起こる困難な実情を直接、生活場面として把握する必要があります。会話としてのやりとりからは判らないことが多いものです。ご近所やお友だちとのお付合いなども、知的な衰えを契機に、以前とは異なった状態から、何らかの影響が及んだり、交渉の異常や関係の悪化などを招くこともありますので、お年寄りに関わる周囲のひとびとが常に近隣関係や交友関係、あるいは、生活に必要な、買い物の場や、金融機関、医療機関、高齢者の集う機会など対外関係にも関心をはらうことが必要です。

(2)感情や意欲の変化

 情意の衰えもお年寄りに稀ならず現れます。感情のコントロールが難しくなり、喜怒哀楽の節度が保てなくなって、怒りっぽくなったり、苛立つ、すぐ悲嘆にくれる、不安な頼りない気持になる、依存的になるなど、感情の不安定性が目立つようになります。また、気分の晴れない状態や意欲の低下が続くと、興味や関心の乏しさが表立つようになり、消極的になったり、横になっている時間が増して、筋力の低下を招き、これが更に活動性を弱めるという悪循環ともなります。

(3)睡眠、覚醒の乱れ

 これらのこととは別に「睡眠」や「意識」の問題も生活に大きく影響します。脳の機能としてヒトに本来備わっている、眠る、醒めて活動するというリズムが崩れると、昼夜のけじめがつかなくなったり、脳の機能の衰えたお年寄りには、容易に「意識障害」が起こります。清明な意識が保たれず、変動しやすく、反応が鈍くなったり、異常な言動や幻覚などを示す「せん妄」といわれる状態がよく見られます。

(4)言動に見られる異常性

 生活上の行動が不適切になったり、過剰になったり、異常になるなどは、現状の認識や行動の選択に誤りや一方的思いこみがある場合に起こりますが、説得も制止や注意も聞き入れず一方的に強行し、反発、反復するなどで周囲を困らせることもよくあります。



2.高齢者との関わりと生活面での配慮

1.はじめに
2.高齢者との関わりと生活面での配慮
3.福祉サービスの活用
4.高齢者支援の相談窓口
5.医療機関への受診
6.リハビリテーション
7.おわりに

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