![]() |
|||||||
奈良女子大学生活環境学部教授 清水 新二 中高年男子の自死問題とサバイバーここ数年来、「中高年男性の自殺急増」といった見出しが、新聞紙上に躍ることが多いのです。参考までに、平成10年について年齢別に10万人当たり何人の人が自死したかを男女別に示した図1を見てみましょう。するとやはり実際、男性自死者に中高年が多いことは間違いない事実です。 その背景には長引く経済環境の悪化があることは疑いを得ません。しかしこの統計の裏側にあるもう一つの事実にも目を向けてみる必要があります。それは自死した中高年男性の数だけ、妻子ら遺族が発生しているという厳然たる事実です。一般に自死者の周囲には甚大な影響を受ける人びとが5人はいるといわれます。自死が本人だけの問題にとどまらず、周囲の者も巻き込むことが多いという事実を表現する一種の言い回しなのですが、特に現世代の中高年男性の多くは家族を持っているので、多数の女性(配偶者/パートナー)や子どもが自死者の遺族という立場に立たされることになります。遺族は英語でサバイバー(survivor)といわれます。日本語の「遺族」は遺された“家族”を意味することが多いと思いますが、サバイバーは決して遺された家族だけではありません。友人・恋人、近隣・親族、職場の同僚や幼馴染の旧友など、ある人の自死によって大きな精神的影響を受ける多様な人がサバイバーです。ですから少々窮屈なのですが、「自死遺族」という場合、遺された家族はもちろんのこと、もう少し広く英語のサバイバーの意味で私はこの言葉を使います。 自殺者3万人時代 |
|||||||
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |