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奈良女子大学生活環境学部教授 清水 新二 「生き残り」の意味言うまでもなく、サバイバーは生き残った者、生き抜いた者を意味します。「生き抜いた」とは少々オーバーな表現にも思えますが、しかしどういうことを意味しているのでしょうか。どれだけその心情や心理を代弁できるか不確かですが、自死遺族の妻の立場から考えてみたいと思います。 彼女たちはある日突然、配偶者の自死に遭遇し、悲嘆だけではなく受け入れるにはあまりにも不可解な体験をします。しかしながら今の日本ではそれは個人的問題として処理され、社会的には捨て置かれてきたも同然の扱いとなっています。中高年男性の自死が社会的問題として語られるのとは非常に対照的だと思います。
封印し切れればそれはそれでいいはずですが、事実は正反対です。重く辛い体験を一人で胸の奥底に抱え込みながらも、一日たりともそのことを忘れることはないのが実情です。ある高齢の自死遺族の方からいただいた手紙には、もう何十年と子どもや孫に事実を話そうか話すまいかと悩み続けてきたことが連綿と記されていました。遺された自死遺族の多くは周囲からの理解もサポートもなく、こうした孤独で辛い思いを胸に抱えながら、その後の人生を歩み続けなければならないのです。いっそ自分も死んでしまいたいとの思いも一度ならず感じてきたはずです。事実このサバイバーの中から、再び自死する者が少なくないのです。遺されたサバイバーすなわち自死遺族とは、こうした体験と困難さ、そしてそれにもかかわらず生き抜いてきた人々を指す言葉です。 自殺者3万人時代 |
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