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No.4 見えざる自殺問題:自死遺族のサポート

奈良女子大学生活環境学部教授 清水 新二


自死遺族へのサポート〜ポストヴェンション〜

 現在公的機関で自死遺族をサポートする業務と関係する部署はといえば、あることはあるのですが、実質的に無きに等しい状態です。自死者が運び込まれる救急救命センターや一部大都市の監察医務院では、実際のところ医師やスタッフは遺族のことが気になってもとうていそのケアまで手が回らない現状にあります。他方、こころのケアを受け持つ精神保健福祉センターでも、問題の重要性は認識されだしているものの、全国的にみると例外的な活動にとどまっています。ごくごく一部の精神科クリニックで自死遺族のグリーフケアが行われている程度です。残念ながら日本では、まだまだ自死遺族への支援策は不十分と言わざるを得ません。

 そうしたなかで、わが国でもようやく自死遺族への関心が芽生え始めてきました。あしなが育英会の自死遺族の集いなどがテレビで放映されただけでなく、私を含めてこの問題に関心を寄せてきた関係者が自死の予防(prevention)、危機介入(intervention)のみならず、予防的事後ケア(postvention)の大切さ、重要性を繰り返しいろいろな場で喧伝してきたこともあります。ポストヴェンションという耳慣れない用語ですが、単純にいえば自死後のサバイバーへの事後ケアということになりますが、事後ケアと呼んだのではこの用語の重要性は十分にくみあげることはできません。なぜなら適切な事後ケアこそ、サバイバーの中から再び自死者を出す傾向を少しでも予防することにつながる、大きな自死予防活動でもあるからです。

 こうして民間の支援活動・団体も少数ながら生まれてきました。遺族が寄り集まって自らの体験や現在の心境を話し合うグループと、これを支援する活動です。全国に点在するいくつかの自死遺族支援活動の他、インターネット上で遺族交流を進めるグリーフネットもあります。それでも全体のサバイバー支援のニーズからすれば、まだまだ焼け石に水といったところです。

 行政側の支援策としては、自死そのものへの予防対策はもちろんのこと、事前・事後に遺族の相談や援助をする窓口の整備、遺族の生活支援策や自助グループへの援助など、いくつかのことが考えられます。例外的ながら、行政にできることできないことを見定めた上で、自死遺族サポート活動を立ち上げたグループに側面的支援を組み始めた精神保健福祉センターも動き出しました。

「自死」という言葉

自殺者3万人時代
中高年男子の自死問題とサバイバー
4人に1人が親しい人の自死を体験
「生き残り」の意味
自死遺族へのサポート〜ポストヴェンション〜
「自死」という言葉
「自死を受けいれる」ということ

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