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No.7 青年期のひきこもりと家族

山梨県立精神保健福祉センター・山梨県中央児童相談所 近藤直司


3.社会的ひきこもりの精神医学的背景

 社会的ひきこもりの状態をきたしている人には、その原因、ないしは一因として、何らかの精神症状や心理状態、あるいは特徴的なパーソナリティ特性や生来的な発達特性がみられます。社会的ひきこもりは、たとえば以下のような状況で生じています。

□幻聴や被害妄想などの精神病症状によって対人関係からひきこもっている。
□生活全般にわたって意欲や活力が著しく低下している。
□不安や緊張、恐怖感のために社会的活動が著しく制限されており、本人もそのことを悩んでいる。
□もともとの不安・恐怖感は刺激を回避することで軽減している。本人は現状を変えようとは考えていないので、その状態が固定化してしまっている。
□何とかしなければと思っているが、失敗を恐れる気持ちが強すぎて、何一つ行動に移せない。
□学力や社会性などの面で、もともと同年代の仲間についていけないところがあり、ここに至るまでに、すっかり自信をなくしてしまった。
□自尊心が傷つくことに過剰に敏感であり、そのような場面を頑なに回避している。
□社会への志向性や自己実現の希望を抱いているが、プライドが高すぎて、頭を下げたり、コツコツ努力することはしたくないようである。
□根深い厭世観や万能的な傾向が目立つうえ、依存的、他罰的な傾向も強く、自ら問題を解決しようという動機付けは曖昧である。

これらの問題は、精神医学的には統合失調症や気分障害、不安障害、パーソナリティ障害(ないしは傾向)、精神遅滞や広汎性発達障害などの診断カテゴリーに分類されます。また治療・援助方針としては、薬物療法が必須なものやある程度の効果が期待できるもの、もって生まれた知的能力や発達上の特性(得意なことと不得意なこと)を考慮して支援すべきもの、根気強い心理療法的アプローチが重視されるものなどに分類することができます。

また、ご本人が医療・保険・福祉サービスを求めている場合とそうでない場合とでは、援助の難しさはかなり違ってきます。こうした多様性を認識しながら多くの治療・援助実践を積み重ねることによって、個々のケースに合った治療や援助が選択できるようになってゆくものと思われますし、新たに必要なサービスを検討することもできるでしょう。

4.社会的ひきこもりの文化・社会的背景

1.はじめに
2.ひきこもりケースの現状
3.社会的ひきこもりの精神医学的背景
4.社会的ひきこもりの文化・社会的背景
5.ひきこもりと家族
6.「橋渡しシステム」としての家族
7.家族支援の考え方と「自立を支える」こと

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